怪作!快作!「耳刈ネルリ」シリーズ感想の簡単まとめ

 耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳 (ファミ通文庫) 耳刈ネルリと奪われた七人の花婿 (ファミ通文庫) 耳刈ネルリと十一人の一年十一組 (ファミ通文庫)
耳刈ネルリ」シリーズという、異世界を舞台にした学園もののライトノベルがあります。
作者の石川博品のデビュー作で、全3巻、1巻では各国から集まった学生達の異文化コミュニケと抗争劇、2巻では学園祭で演じたミュージカルの内容と大物作家の国外への亡命計画の顛末、3巻では学生生活の諸風景と異国の王女さまとの恋の行方が描かれます。
メジャーな作品とは言い難いですが、これがラノベ史上の大傑作、作者のやる事の無茶さが物凄い上にやたらめったらと面白くたいへんオススメなんですが、この作品がどんなふうに受け取られているのか、web上の感想で自分が面白く読んだものをちょいと集めてみました。
ネルリをもう読んだ人にも、まだ読んだことのない人にも、何か参考になったらいいなと思うものであります。

ネルリの文章表現について

「ネルリ」は異世界ファンタジーなのに、『化物語』の阿良々木さんの語りのような、妄言一人称文体を採用してます。やることが無茶苦茶ですが、珍奇さにとどまらない共感喚起効果を挙げていて不思議です。

取り澄ました完成度の高さではなく、レイチのHENTAIナラティブによるカオスを選んだ。恐らくは、読者へのサービスとして、敢えて。そのストイックさにこそ自分は感動しますし、ライトノベルの未来がまだまだ明るいことを信じられもするのです。

『耳刈ネルリと十一人の一年十一組』(石川博品/ファミ通文庫) 「ネルリ・オア・ダイ」 - 高度に発達した気遣いは、気違いと区別がつかない 『耳刈ネルリと十一人の一年十一組』(石川博品/ファミ通文庫) 「ネルリ・オア・ダイ」 - 高度に発達した気遣いは、気違いと区別がつかない

たまに時代考証というか世界考証が妖しくなってくるのすら、いとおしい。デストロンって言った時はさすがに「落ち着け」とか口に出してしまいましたが。

感想 石川博品 『耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳』 - オタわむれ-日々是寝言- 感想 石川博品 『耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳』 - オタわむれ-日々是寝言-

ところがレイチの独白は、どんなにふざけたことを書いていても、するっと頭に沁みこんで来る。本当に不思議なんだけど、レイチの言葉は常にどこかに”静け さ”とでも言うものがあると思うんです。静かで部屋の中で雨降る様子を窓から眺めているような、そんな静けさを感じるんだよな

『耳刈ネルリと十一人の一年十一組』読了: 積読を重ねる日々 『耳刈ネルリと十一人の一年十一組』読了: 積読を重ねる日々

ネルリの異文化・学生生活の描写について

作者は異世界を縁取る小ネタやちょっとしたエピソードの創作能力にたいへんに長けており、「連邦」のいろんな地域の文化・風俗と、諸地域から集まった学生達による文化交流と楽しい学生生活を描き出します。これは作品の見所ですよ。

クラスの皆と一緒に食堂に詰めかけて騒ぎ、放課後は勉強会(ルビ:グループ交際)に励み、お風呂上がりの女の子達とばったり遭遇してドキドキし。寮の屋根の雪下ろししてるだけで面白いってのは凄いよ。

彼女は異国の王女さま -  「耳刈ネルリ」シリーズ読了 - 偏読日記@はてな 彼女は異国の王女さま -  「耳刈ネルリ」シリーズ読了 - 偏読日記@はてな

世界観+生活感の魅せ方においてはライトノベルのなかでもトップレベルにあるんじゃなかろうか.

2010-02-19 - 十七段雑記 2010-02-19 - 十七段雑記

ネルリとロシア萌えについて

舞台となる「連邦」はどう見てもソ連。作者があげた作品の元ネタは『ネルリ』(プリシュヴィン著 福岡星児訳 『近代小説集』〈世界文学大系筑摩書房 1965)、『デルスー・ウザーラ』(アルセーニエフ著 長谷川四郎訳 〈河出文庫河出書房新社 1995)、『あしながおじさん』(ウェブスター著 坪井郁美訳 福音館書店 1970)、『韃靼疾風録』(司馬遼太郎著 〈中公文庫〉 中央公論社 1991)の4作でした。

内容はロシア萌えです。

石川博品『耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳』感想 - Does the falling girl dream of the rye? 石川博品『耳刈ネルリ御入学万歳万歳万々歳』感想 - Does the falling girl dream of the rye?

惜しい点はたった二つ。
 一つは何よりもイラストが速水螺旋人じゃないこと。

なぜ、イラストが速水螺旋人じゃないんだ?「耳刈ネルリ入学万歳万歳万々歳」 なぜ、イラストが速水螺旋人じゃないんだ?「耳刈ネルリ入学万歳万歳万々歳」

ネルリというキャラクターの新鮮味に魅せられた1巻、演劇と文学の記憶を心地よく掻き立てられた2巻に続いて、最終巻ではロシアで過ごしていた頃の生活と精神状態の感触そのものが思い出されてきて、懐かしくてなかなか読み進められないほどだった。

2009-12-27 - オネミリエの出島 2009-12-27 - オネミリエの出島




手前味噌になっちゃいますけどコレも加えておきますね。

ネルリはいまなお現代ラノベの最前線と言っていいんじゃーないかなー。

Togetter - 「読むとライトノベルというジャンルへのリスペクトが復活する「耳刈ネルリ」シリーズ」 Togetter - 「読むとライトノベルというジャンルへのリスペクトが復活する「耳刈ネルリ」シリーズ」