ログ・ホライズンとニンジャスレイヤーを比較してみた

ニンジャスレイヤー キョート・ヘル・オン・アース 【上】 (キョート殺伐都市 # 7)

ニンジャスレイヤー キョート・ヘル・オン・アース 【上】 (キョート殺伐都市 # 7)

  ログ・ホライズン ニンジャスレイヤー
超人 冒険者(PC) ニンジャ
非超人 大地人(NPC モータル
そもそものきっかけ 大災害(MMORPGの現実化) Y2K2000年問題)を発端とした電子戦争とニンジャソウル憑依現象の加速的増加
東の大都市 アキバ ネオサイタマ
東の大都市の統治組織 円卓会議 ソウカイ・シンジケート/アマクダリ・セクト
東の大参謀 シロエ ゲイトキーパー/アガメムノン
東の大参謀の庇護下にある子供 トウヤ/ミノリ ラオモト・チバ
反社会的人格者 デミクァス/ロンダーク ニンジャスレイヤー
非超人の協力者 レイネシア/リ=ガン ナンシー・リー
転化者 ルンデンハウス=コード シャドウウィーヴ
ミュージシャン 五十鈴 DJゼン・ストーム/ニスイ・タニグチ
ファストフード 軽食販売クレセントムーン 無人スシ・バー
産業の担い手 生産ギルド 暗黒メガコーポ
世界の秘密に迫る独立勢力 カナミとゆかいな仲間たち フジオとゆかいな仲間たち
西の大都市 ミナミ キョート・リパブリック
西の大都市の統治組織 Plant hwyaden ザイバツ・シャドーギルド
西の象徴君主 濡羽 ロード・オブ・ザイバツ
北海道の都市 ススキノ ドサンコ・コロニー


・善悪が反転している箇所が多い
・ファンタジーサイバーパンクというジャンルの差こそあれ、ともに異世界化した日本を舞台としている。日本が舞台であることで読者が異世界へ入りこみやすくなるだろうし、テーマやメッセージの迫真性を強化する効果もあるだろう。またそもそも、皮膚感覚から理解できる異世界描写はラノベファンタジーでしばしば追求されてきたものである
・両作とも関東と近畿の中心都市が突出して発展しており、ほかの地域は荒廃している。
異世界化した世界を舞台としていることで、こんな世界は間違ってるという感覚が導かれる。このへん閉鎖世界→http://d.hatena.ne.jp/hatikaduki/20080428/1209400133と似てるんだけど、ログホラや忍殺には女神的な存在はいない
・前提としての世界が間違っているために、その世界におけるヒーローは腹黒メガネや狂人といったダークヒーローになりがちなのかな
・ログホラはデミクァスやロンダークそれぞれのその後の行く末については、作者の問題提起とそれを消化しようとする意思は感じるし、そこにはとりあえず侮蔑されるべき者の喩えとしてマケグミ・サラリマンをもちだすようなベッタベタな邪悪さはないんだけど、それでも作品を成立させるために結局はそいつらを小者として描かざるを得ない。いっぽうで忍殺もゲイトキーパーやアガメムノンをわかりやすい悪者として描写せざるを得ず、故に原作者は作品を「理想的なディストピア」と語り、あなたの親や上司はニンジャではないので殺してはならないと釘を刺す。それは作品の限界ではあるけど、そもそも別にそれが作品の主眼ではないのでそんなとこに深入りせず浅く触れるにとどめるのが正解である
・深入りすると『ウォッチメン』のオジマンディアスとロールシャッハになるけど、ログホラも忍殺も別にウォッチメンではない
・イン殺さんのウォッチメンの紹介→http://kill.g.hatena.ne.jp/xx-internet/20090613/p1
・エンタメ作品におけるテーマは、レイヤーの違う読み筋を用意することで作品の面白さに交響楽的な奥行をもたらすために存在するに過ぎない。ただしテーマを面白く語るためには一定のマジさが必要ではある
・ログホラはシステムの善の側面を奉じて個人には自己変革と連帯を求める。システムによってもたらされる幸福ってのはつまりメシと金と家だ。忍殺の作者は二人組だけど、比較的マッチョで自己変革寄りなボンドはシステムに囚われた人々の目覚めと闘争をかっこよく描き、よりセンシティブなモーゼズは弱者や敗残者に寄り添う姿勢を示す、ように思われる。とはいえ互いが互いに影響を与えあっているだろうし、また二人とも理不尽への怒りと努力(カラテ)の積み上げを尊いものとしている
・ログホラは思いっきりゲームだけど忍殺もTRPGの影響の感じられる作品ではある。NPCの自立と逆襲という物語はニンジャスレイヤーにおいてはカブキ・コムが担う気がするけど今のところよくわからない


魔術士オーフェンの原大陸編は、魔王たるオーフェンが勇者たるクリーオウやマジクと手を取り合って、物語の終わったその先の世界でより良い社会を目指してまおゆうしてみたところ最終的に出来上がったのがソウカイ・シンジケートであることに苦悩する話とか言えるかな。オーフェン=ラオモト・カン、マジク=ダークニンジャ、エド=インターラプター、クレイリー=ゲイトキーパーって感じ
・忍殺は第三部になってニンジャがわりと社会化された存在として描かれるようになったのでオーフェンと比較しやすくなった気がする
・短編集楽しみです

魔術士オーフェンはぐれ旅 魔王編

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・というかエンターブレインのソフトカバーは面白いの多いですよ。世界が間違っていることを前提にその異常なありようを活用しながらサバイバルするある種のマタギみたいな主人公を軽快に描く『この世界がゲームだと俺だけが知っている』や、登場するのはNPCのみのまあつまりは正統派エピック・グルメ・ファンタジーである『辺境の老騎士』の2作はめちゃめちゃ面白いし、あとは魔王ルートを邁進する『オーバーロード』もなかなかです
この世界がゲームだと俺だけが知っている 4

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辺境の老騎士2 新生の森

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