ザイバツ派閥メモ

ニンジャスレイヤー キョート・ヘル・オン・アース 【下】 (キョート殺伐都市 # 8)

ニンジャスレイヤー キョート・ヘル・オン・アース 【下】 (キョート殺伐都市 # 8)

書籍版ヘルオンアース(下)巻頭でザイバツ位階総覧が発表されました。これによって一部名前が隠れている部分がありますが、ほぼ全てのマスター位階ニンジャが明らかになったわけですね。


掲載されているのはまず名誉位階である懲罰騎士ダークニンジャ、四天王パープルタコ・ブラックドラゴン・アイボリーイーグル・レッドゴリラ、執行者メンタリスト、礼拝堂守護ディグニティ。
その下の段に一般のマスター位階にあるアンバサダー・ディプロマット・ゴライアス・ジルコニア・スカベンジャー・チェインボルト・ワイルドハント・デスナイト・トゥールビヨン・ナイトメア・ストーカー・ガラハッド・ノクターン・パラベラム・バンシー・ヘリオン・ランチハンド・コンジャラー・ヴェラー・バードゥン・ペインキラー・サージョン・ブルーオーブ・ジャバウォック・ボーツカイ・ミラーシェード・メイガス・ルーシディティ・クエレブレ・クリムゾンメインの名前が有り、名前が見切れてしまっているニンジャ3名と前述の名誉位階所持者を合わせて計40名となります。


名前が見切れている3名のうち名前の末尾がスで終わるニンジャは、作中に登場した人物に絞るとヘルオンアース(下)に登場したパーガトリー配下のインソレンスが非常に有力な候補。残るには2名はニンジャ名鑑でマスター位階であるとされているヘカトンケイル、カンジ〜でのデスドレインのオミヤゲ・ストリート襲撃に先立って殺害されたと思われる名称不明のマスターニンジャがあてはまるでしょう。
フェルアスリープ〜に登場したモルフェウスも名鑑にマスターと書かれていますが本文中ではアデプトとされており、ザ・ヴァーティゴさんのコメントもあわせて考えるとこれは誤記だったようです。
モータルニンジャ〜に登場したサンバーンとディヴァーラーはtwitter版のニンジャ名鑑ではマスター位階とされていましたが書籍版ではアデプトに降格されていました。
またアラクニッドはザイバツにとって最重要ニンジャの一人ですが、幽閉の身であり位階や役職は得ていません。


ザイバツはロード・オブ・ザイバツを頂点として、最高幹部であるグランドマスター、その下のマスター、一般のニンジャであるアデプト、そして徒弟のアプレンティスからなる位階制度を持っていました。
マスター位階は単純な戦闘能力のみならず、指揮能力や礼儀作法、ワビチャやハイクのワザマエも含めた総合的な能力の高さが求められる実際名誉ある役職であり、そのためマスターニンジャ並みのカラテを持ちながらアデプト位階のままのニンジャもザイバツには多数存在していました。また一方で、ディグニティ・アンバサダー・ディプロマット・ストーカー・サージョンのようなカラテ以外の面で際立った能力を持ったニンジャがマスター位階として遇されることもあります。合体前提のヘカトンケイルもだいぶ特殊なマスターニンジャと言えるでしょう。


なお懲罰騎士にダークニンジャの、マスター位階にパラベラムの名が有り、逆にグランドマスター位階にトランスペアレント・クィリンの名がないところを見ると、この総覧は第二部開始時点のザイバツニンジャにダークニンジャを加えた時系列上には存在しない一覧であるように思われます。

ザイバツにおける派閥のうちわけ

ザイバツ建前上派閥はないことになっていますが、実態としては本来独立したニンジャ組織をロード・オブ・ザイバツの権威によって無理やりまとめ上げているような状況であり、ネオサイタマで言うならラオモトとゲンドーソーとテツオとアガメムノンとハーヴェスターとアナイアレイターが同じテーブルでお茶を飲んでいるようなものと言えるでしょう。


・貴族派閥とキョート城グループ
ともに貴族階級出身だったイグゾーション・パーガトリー・スローハンドの3人のグラマスは関係が良好で、貴族派閥を形成していました。イグゾーションとパーガトリーはマスターニンジャ以外にも数多くのアデプト位階のニンジャを配下としており、貴族派閥はザイバツ内部における最大勢力でした。なおスローハンドの直属ニンジャは少数精鋭だったそうです。
貴族派閥内部での3派閥は、イグゾーションの死後にルーシディティ・ディプロマットらがスムーズにパーガトリー派閥にスライドする程度には交流があるものの、一方でスローハンドがサンバーンたちに指令を出す際にわざわざパーガトリーからのメッセージであるように偽装する程度には壁があり、またイグゾーション派閥のマスターがパーガトリーの腹心メンタリストのゲン・ジツに対抗するための訓練を受けているくらいには緊張感を持っていました。


イグゾーション派閥に属していた事が確定的なニンジャはアンバサダー・ディプロマット・パラベラム・ジルコニア・ルーシディティ。
くわえてイグゾーション派閥はコフーン遺跡での神器発掘プロジェクトを担当していたらしく、そこからトゥールビヨンとメイガスもイグゾーション派なのではないかと思います。


メンタリスト・チェインボルト・ガラハッド・コンジャラーはパーガトリーの指示で動いておりパーガトリー派でしょう。おそらくマスター位階であるインソレンスもパーガトリー派のニンジャですね。
またブラックヘイズの雇い主が継続してパーガトリーであったとするならボーツカイもパーガトリー派なのではないでしょうか。


スローハンド派閥は少数精鋭であったとのことで、スローハンド配下として描かれているのはジャバウォックとブルーオーブのふたりのマスターニンジャと、スローハンド派閥であることを隠して汚れ仕事を引き受けているアデプトのバンダースナッチのみ。
加えて、マルノウチ抗争参加者のソーサラーが、ザイバツ側の指揮官がスローハンドかデスナイトかどっちかだと言っており、スローハンド派閥に属していたデスナイトが腰の重いグランドマスターたちの代わりに作戦を指揮していたものと思われます。相棒のバイオイーグルもスローハンド派とつながりの深いヨロシサン製薬によるものではないでしょうか。スカベンジャーもヨロシサン系の研究施設にいて自身の肉体をバイオ改造していたことからスローハンド派閥であるように思われます。開発していたバイオシカ兵士が市街戦用ってあたりも、キョートの警察機構とつながりの深いスローハンド派のやることっぽいですしね。


貴族派閥がザイバツの最大勢力ではありますが、もうひとつの大きな勢力がパラゴンを中心としたキョート城に勤めるニンジャたちです。


まずノクターン・ヴェラー・ヘリオン・バードゥンの4人はスローハンドがパラゴン直属ないしはロードの親衛ニンジャであろうと推察しており、そのうちヴェラー・ヘリオン・ゴライアスの3人は名鑑にキョート城中枢を守る親衛ニンジャという記述があります。またほとんど描写のないノクターンはよくわかりませんが、敵の動きを鈍らせるジツを持つバードゥンは他の親衛ニンジャと連携して戦うのが前提のニンジャであるように思われます。
ヘリオンの名鑑の記述からするとロードの親衛隊自体がパラゴンの管轄であるようなのでまあみんなパラゴン派という認識でよさそうですね。というかフーンクとしかしゃべれないゴライアスでもマスター位階になれるんですか。


グランドマスター・ケイビインは名鑑によるとキョート城守護の任務を与えられていました。「システム・オブ・ハバツ・ストラグル」にはキョート城内外を守護するケイビイン派閥という記述もあります。
同様にケイビイン派閥のマスターニンジャであるペインキラーの名鑑にもキョート城の中庭を守護していたという説明があり、共通して守護という言葉が使われています。


さて、他にも守護という単語を用いて紹介されているニンジャは多くいて、まず礼拝堂で日々祈りを捧げているディグニティは礼拝堂守護という名誉位階を得ていました。 
マスター位階のクエレブレは名鑑では礼拝堂手前のエリアに配置された守護者のニンジャとされており、またクリムゾンメインは礼拝堂手前のエリアに配された守護者のニンジャの中でも、ナンブ鉄に覆われた危険な戦闘ルームを任されている高位のマスターニンジャであるとされています。クリムゾンメインは戦闘においてはブラックドラゴンやミラーシェードのような目立った強さはないので、あるいはクエレブレらキョート城内勤のニンジャ達の管理職として有能な人材だったのかもしれません。
クエレブレはディグニティを個人的に崇拝していたり、ディグニティはクリムゾンメインを使命感の強いニンジャだったと評するなど、この3人は職場での距離が近かったようです。


さらにグランドマスター・ヴィジランスも、収録しそこなわれて後日公開された書籍版名鑑で電算機室守護と説明されています。
ですので守護という文言はケイビイン派閥とイコールというわけではないようです。


「トビゲリ〜」におけるギルドを破門となったバンダースナッチを捕殺対象とした警備訓練の際に、城内のニンジャとは別に庭園内を警戒するケイビインの下僕の存在が示されていた点や、ケイビインが庭師(=お庭番)として表現される機会が多い点からすると、ケイビイン派閥の警備担当領域はホンマル内部は含まず、あくまでキョート城各区の庭園や城門だったのではないでしょうか。キョート城内外の守護という表現は城門周辺の内と外とでも成り立つとは思います。


なおヴィジランス直属のマスターニンジャはストーカーの1名のみであり、またヴィジランスの配下には電算機室の電脳ニンジャ達の他、ザイバツの秘密に近づきすぎたモータルを始末する専任の掃除屋も存在しました。


またキョート城医療エリアを取り仕切っていたサージョンもマスター位階ですね。特定のグラマスの派閥に属していたかどうかがわかる描写はありませんが、属していたとしたらパラゴン派でしょうか。


さて、ヘカトンケイルは名鑑でキョート城ホンマルを防衛するマスターニンジャと記述されています。親衛でも守護でもなく防衛という単語を用いて紹介されているニンジャはコイツだけであり、任務の内容や属している派閥に違いがあってもおかしくありません。
ヘカトンケイルは合体前の3人組がパーガトリー派閥によって構成されたムーホン者討伐隊のなかに混じって登場してきているあたり、パーガトリー派の可能性が比較的高いのではないでしょうか。。


・その他
上記二つの大きなグループに加えて、比較的独立した勢力として、ミラーシェードとバンシーのふたりのマスターニンジャを抱えるサラマンダー派閥が存在します。


またネオサイタマ駐在のワイルドハントは派閥に属していませんでした。


ザイバツ・シテンノの名誉位階にあるブラックドラゴン・パープルタコ・アイボリーイーグル・レッドゴリラの4人も師トランスペアレントクィリンの失脚後は無派閥となっていましたが、うちブラックドラゴン以外の3人は後にネオサイタマからやってきたダークニンジャの指揮下に入ることになりました。


残るマスターニンジャはランチハンド、ナイトメア、それにオミヤゲストリートでデスドレイン一味に殺された名称不明のマスターニンジャです。
ダークドメインとニーズヘグは配下を持っていません。サラマンダーはミラーシェードとバンシーの他に、ヴィジランスはストーカーの他にマスターニンジャを抱えている様子はなさそうなため、派閥に入っている可能性がありうるのはイグゾーション・スローハンド・パーガトリー・パラゴン・ケイビインになります。
手がかりは少ないですが、まずアンバサダーの護衛イグナイトの師であるランチハンドはイグゾーション派閥の可能性が高いのではないでしょうか。
ナイトメアは口ぶりからするとイグゾーション派ではなさそうですし、登場したタイミング的にスローハンド派ならナンシーに構っているどころではなかったはずなので、可能性としてはパーガトリー派・パラゴン派・ケイビイン派のどれかになります。ディプロマットに対する尊大な態度、なぜか韻を踏んで喋る変なキャラクター性からするとパガ派であるようにも思えますがさてどうでしょうか。
オミヤゲ・ストリートをパトロールしていたマスターニンジャは不明な点ばかりですが、職務の内容やアデプト達を率いていたあたり貴族派閥の、なかでもパーガトリー派っぽいものを感じなくもないですね。


twitter版の名鑑ではマスター位階とされていたサンバーンとディヴァーラーもパーガトリー派です。またグラディエイターはジェノサイド捕獲に成功してキョートに移送完了すればマスター位階に出世できたらしい。ブラックヘイズがゾンビーニンジャのキャバリアーをボーツカイに送り届けていたことを思い出すと、リー先生がらみの任務はパーガトリーの指示によるもののように思えるので、グラディエイターも出世した際にはパーガトリー派の一員となっていたのではないでしょうか。


マスターニンジャの中でも地位が高そうなのは執行者メンタリスト、懲罰騎士ブラックドラゴンおよびダークニンジャ、コフーン遺跡発掘の責任者でマスター位階のメイガスを副官としていたジルコニア、マルノウチ抗争時点のまだやる気のあった頃のデスナイト、名鑑に高位のマスターニンジャと記述されているクリムゾンメイン、ネオサイタマ駐在組の実質的な指揮者だったワイルドハントあたりですね。



2部開始時点での各派閥のマスターニンジャは以下みたいな感じなのではないでしょうか。推測を多く含むので信用はしないでください。
イグゾーション派:ジルコニア・ランチハンド・パラべラム・ルーシディティ・メイガス・トゥールビヨン・ディプロマット・アンバサダー
パーガトリー派:メンタリスト・ヘカトンケイル・ナイトメア・コンジャラー・チェインボルト・ボーツカイ・ガラハッド・インソレンス・名称不明マスターニンジャ 
スローハンド派:ジャバウォック・ブルーオーブ・スカベンジャー・デスナイト
パラゴン派:ゴライアス・ヘリオン・ヴェラー・バードゥン・ノクターン・サージョン・ディグニティ・クリムゾンメイン・クエレブレ
ヴィジランス派:ストーカー
ケイビイン派:ペインキラー
サラマンダー派:ミラーシェード・バンシー
ダークドメイン派:なし
ニーズヘグ派:なし
無所属:ワイルドハント・ブラックドラゴン・レッドゴリラ・アイボリーイーグル・パープルタコ
以上39名。


ヘルオンアース開始時点では以下となります。
パーガトリー派:メンタリスト・ヘカトンケイル・ナイトメア・インソレンス・ルーシディティ
スローハンド派:ジャバウォック・ブルーオーブ
パラゴン派:ゴライアス・ヘリオン・ヴェラー・バードゥン・ノクターン・ディグニティ・クリムゾンメイン・クエレブレ
ヴィジランス派:ストーカー
ケイビイン派:ペインキラー
ニーズヘグ派:ダークニンジャ・パープルタコ
不明:ランチハンド
以上20名。半減してます。なおミラーシェードとバンシーはセプクないし拷問死させられるところをダークニンジャによって秘密裏に匿われており、ディプロマットとアンバサダーはヌケニンしてニンジャスレイヤーの協力者となっています。
2部完結時点で生き残ったのはダークニンジャ・パープルタコ・ミラーシェード・ランチハンド・ディプロマット・アンバサダーの6人のみでした。


貴族派閥

グランドマスターの派閥闘争における動きを見てみましょう。


・イグゾーション派
イグゾーション派は、所属アデプトのデトネイターがギルド内最有力派閥だったと振り返っています。イグゾーション派はマスター位階の人数も多ければその平均レベルも高く、戦略上の価値の大きいポータルの双子も抱えており、デトネイターの評価も的を射たものだったのではないでしょうか。
また、ギルドの基本方針である「格差社会」の推進をリードし体現しているのがイグゾーションであることを考えると、ロードを脇に置けば、キョートにおけるニンジャ秩序の頂点にあるのがイグゾーションであり、パーガトリーとスローハンドはその副将である、とさえ言えるかもしれません。


イグゾーションは使い捨てにしやすい野卑な下級ニンジャを多く抱えることを好む一方、実際にはニンジャソウル憑依者であろうと下層出身者のことは侮蔑しており、上流階級出身のニンジャソウル憑依者による支配を理想としていました。そのため配下のマスターニンジャは文武両道に秀でているほか総じて高慢さが目立ちます。トゥールビヨンがアッパーガイオン富裕層の出であるほか、ポータルの双子も育ちがよさそうであり、他のマスターニンジャも上流階級出身者が多いものと思われます。
また神器発掘プロジェクトにかかわっているニンジャが多いため、プロジェクトの指揮者としてのマスター位階の側面が強く出ているニンジャが多いですね。


イグゾーション派のパラベラムがロードの不興を買った際にこれを誅殺したのはダークニンジャ(とトゥールビヨン)でした。そうした因縁もあってかイグゾーションはダークニンジャに対して強い疑念を抱いており、セキバハラの秘密拠点でニンジャスレイヤーやウミノ・スドを拷問にかけ尻尾をつかもうとしていましたが、実際のところイグゾーションが死んだデスフロムアバブ〜時点でのダークニンジャはサンダーフォージの庵を探しているところであって反ザイバツの企みは特に行ってはいませんでしたし、もちろんニンジャスレイヤーとつながりがあるわけでもありませんでした。しかしヘルオンアースでの最終局面を考えるとイグゾーションの見通し自体は正しかったとも言え、大局が見えすぎるがゆえに現在の状況の理解を誤って結果として死を早めたと言うことが出来るでしょうか。


・パーガトリー派
パーガトリー派閥として登場するニンジャは作中で最も多く、派閥の規模の大きさがうかがえますが、一方で所属マスターニンジャにはカラテのいまいちな者も目立ちます。


パーガトリー派のマスターニンジャはアデプトやクローンヤクザを率いる小部隊の指揮官であることが多く、大規模なプロジェクトの指揮者としてやグランドマスター個人の側近としてではない、中間管理職としてのマスター位階の側面が見受けられます。
パガ派マスターの平均点が低いのも、パーガトリー個人の側近としてではなく一定数のアデプトニンジャの代表、中間管理職としてマスター位階に出世したからであり、そうした数多くのマスターをさらに締め上げるための存在が執行者メンタリストなのでしょう。 
ザイバツのニンジャ統治組織としての側面の代表として、キョートにおける数多くのニンジャ達と彼らの営む奴隷茶園のような非合法ビジネスをザイバツ支配の中に紐づけていくことがパーガトリーの役割であり、そのためのネンコ(年功序列)重視だったのではないでしょうか。


パーガトリーは同盟相手のスローハンドほどには頭が切れるわけではありませんが、それを自覚している、ないしは実際以上に愚鈍にふるまっており、その陰で本来なら敵対相手であるパラゴンと秘密裏に手を結ぶなどの泥臭い立ち回りをおこない最終的に他勢力を出し抜くことに成功しました。直後にザイバツが破滅したわけではありますが。
パラゴンと手を結べたのは、パーガトリーが支配者としてのビジョン・理想のようなものをとくに持ち合わせていないからという点が大きな要因でしょうね。イグゾーションやスローハンドは各々の考える理想の支配体制像があるため、パラゴンのヘルオンアース計画とは相容れない。パーガトリー派はイグゾーション派やスローハンド派と比較してよりザイバツという組織にうまく融合することができていたのではないでしょうか。


その他、イグゾーション死後にはポータル兄弟やルーシディティをはじめとした多くのニンジャを旧イグゾーション派から吸収してさらに自派閥を拡大させ、またダークニンジャがニーズヘグやシテンノと結んで大きな勢力となったことを警戒デスドレインを手引きして休暇中のダークニンジャにぶつけたりしています。


・スローハンド派
スローハンドはキョートの警察機構であるケビーシ・ガードに顧問として食い込むほか、トランスペアレント・クィリンの失脚後にクィリンの持っていたヨロシサンとの秘密コネクションを確保して、配下をバイオ改造したりサブジュゲイター開発に関わったりしていました。


ヨロシサンとの秘密裏のつながりは、スローハンドが自身のソウルの副作用で通常の1.5倍のはやさで進んでいる肉体の老化を止めるために必要としたものではありますが、スローハンドの構想するザイバツの未来像が摂政スローハンドの指揮下のもとにサブジュゲイターによって管理されるバイオニンジャとクローンヤクザたちによる昆虫めいた社会であり、それを我らが採るべき進化とまで言っているあたり完全にヨロシサンに取り込まれています。パラゴンじゃなくてもこいつ早く始末しようって思わざるを得ないのでは。
なおスローハンド配下のマスターニンジャで重度のバイオ改造者であるジャバウォックやブルーオーブやスカベンジャーは、バイオテックが開く未来という理想をスローハンドと共有していたようです。しかしバイオ改造されたものがサブジュゲイターによって支配されてしまうということは、少なくともスカベンジャーは知らされてはいませんでした。


その他、イグゾーション死後にはもとイグゾーション派のアデプトのデトネイターを使ってパーガトリーの地位の失墜を画策していました。一時的にパーガトリー派閥を太らせて最終的に貴族派閥を総取りするつもりだったんでしょうね。またマルノウチ抗争参加ニンジャがニンジャスレイヤーに次々に狩られていった際の対応の遅れをアデプトのシーホースに押し付けてカマユデにしたり、マグロ&ドラゴン社にニンジャ強盗団を送り込む手配をしたりなど、根っからの陰謀屋であるようです。


スローハンドがトランスペアレントクィリンにどういった感情を抱いていたのかは気になりますね。


なおマルノウチ抗争には貴族派閥からパーガトリーとスローハンドふたりのグランドマスターが、マスターニンジャはそれぞれの派閥からコンジャラーとデスナイトが参加しています。指揮していたのはデスナイトのようです。
グラディエイターはツェッペリンからの空挺部隊として参加していたと回想しており、どうもポータル転移でのネオサイタマ侵入ではなかった模様ですね。
テンプラ屋を襲った爆炎はサンバーンによるものでしょう。逆にソウカイニンジャではアースクエイクとビホルダーがデスナイトから高く評価されていました。
この戦いの後ザイバツとソウカイヤとの間で相互不可侵条約が結ばれるのですが、しかしマルノウチ抗争は戦闘のとばっちりを受けて犠牲となるモータルの中からニンジャスレイヤーを誕生させ、ドラゴン・ニンジャ探索の邪魔となるラオモト・カンを間接的に抹殺するため、アラクニッドの予言に従って起こされたものであり、このことはパーガトリーやスローハンドにも知らされてはいませんでした。


キョート城グループ

貴族派閥がキョートにおけるニンジャの編成という意味でのザイバツの本体であるならば、ロードを頂点としたギルドの秩序の中核であったのが、パラゴンを中心としたキョート城のニンジャたちです。


・パラゴン派
パラゴンは貴族派閥のグランドマスターからは甘言でロードに取り入った佞臣扱いされていましたが実際はギルド設立当初からの私心無き忠臣であり、アラクニッドの預言とホウリュウ・テンプル書庫に蓄積された古代ニンジャ知識を手掛かりにロードの支配を助け、キョート城を用いた新世界秩序…というか端的に世界征服を目指していました。カラテも周りが思ってるよりかは強い。
パラゴンが憎まれていたのは、本来であればキョートの支配者であるはずのグラマスたちが組織の幹部に甘んじていることでたまるヘイトの感情がロードに向かわぬよう引き受けているという面もあろうかと思います。
またパラゴン指揮下の親衛ニンジャは超堅い前衛とバフニンジャ&デバフニンジャという強力な敵を複数で囲んで袋叩きにするのに適したラインナップであり、パラゴンがいざとなればグラマスを誅殺できるように準備していたことがわかりますね。


・ケイビイン派
貴族派閥よりはパラゴンと近い関係にあっただろうケイビインは、キョート城守護の任についてキョート城の庭園に部下を配していたほか、キョート城の庭師もつとめており、まさしくお庭番であります。
ケイビインはキョート城守護の役目への責任感が非常に強く、ザイバツの久遠の歴史を誇りとし、ニンジャスレイヤーの侵入を許したときには責任を取ってセプクするつもりでした。あるいはほかのグランドマスターよりも強くキョジツテンカンホーがかかっていたのかもしれません。


・ヴィジランス派
電算機室室長のヴィジランスはトランスペアレント・クィリンの失脚後にグランドマスターに昇格したのでグラマスの中では最も新参となります。
戦闘能力ではほかのグラマスには及ばないものの、ザイバツ組織への貢献度は極めて大きいもので、電算機室はテックに疎いザイバツ上層部の中でネットワーク・セキュリティキョートの経済操作反ザイバツ分子の監視といった過大な職務に日々奮闘、ヴィジランスは職場の屋根裏に住んでいました。配下のストーカーにとっては信頼できる上司だったようですね。
ネオサイタマへの経済攻撃も行っていたらしいですがこれはゲイトキーパーによって阻まれたとのこと。ソウカイヤにはダイダロスもいるしなあ。


ヴィジランスは他のグラマスとは違い、キョジツテンカンホー・ジツの存在とザイバツの成り立ちについてある程度知っているようです。既存の組織がザイバツに組み込まれたのではなく、ザイバツ組織の中で出世し、組織の一部門のトップとしてロードとパラゴンに仕えていたが故の信頼でしょうか。おそらく出世してグランドマスターになったのはヴィジランスだけでしょう。
ニューワールドオダー成った後は何千万ものモータルを電算機室にLAN直結させ24時間体制で秩序を守り続けるぞ、と夢想していました。


ヘルオンアースではキョート城のセキュリティシステムの管理スローハンドの告発、およびモーティマーをそそのかしてオムラとキョート軍とを衝突させ、キョート城が十分にモータルの命を吸い上げるまでの目くらましとするなどの役割を果たしました。


その他

・サラマンダー派
サラマンダーはドラゴンドージョーを出奔してキョート入りしたのち、ザイバツのお墨付きを得て鳴り物入りでシャドー・コンに参戦したそうです。一方でブラックマーケットの掌握にも乗り出し、現在はシャドー・コンを主宰する一方でガイオンのヤクザ組織を支配、ドラッグの流通や賭場の管理で多大なマネーをザイバツにもたらしています。配下からはオヤブンと呼ばれてしたわれていた模様。


また古代ローマカラテ協会をはじめとした大小のニンジャ団体とのシャドー・コンを通しての付き合いも重要な仕事だったことでしょう。


おそらくヴィジランスの次に新参のグランドマスターであり、権力の基礎となっているサラマンダー自身のカラテをさらに高めるべくカラテ技の収集に余念がありませんでした。そのためドラゴンドージョーの弟弟子でチャドー暗殺拳を使うフジキドに対して強い興味を示し、またネオサイタマから移送されてきたドラゴン・ユカノの身柄をパラゴンに渡る前に確保したりしていました。ユカノの身柄を抑えていた件は死後にパーガトリー・スローハンドらから非難され、サラマンダー派の主要なニンジャはセプクを強いられることになりました。


というかグラマスは死ぬとだいたい汚名を着せられますね。


サラマンダーはザムラ・カラテのカラダチが使えますが、この技って接近戦でスローハンド相手に超有利なので、グラマス昇格にあたって後押しになったのではないかなーと思います。


・ダークドメイン
ダークドメインは直属の配下を持っていません。ネオサイタマにもひとりで来たそうです。ディセンション以前はヤクザ処刑エージェントだったとのこと。ノーカントリーのシガーみたいなやつでしょうか。
まあ直属の配下もなにも、本来はザイバツには派閥はないことになってるんですが。


割と普段何やってるのかよくわからないグランドマスターなんですけど、ディフュージョン〜で行ってたのはマスター位階のニンジャの手に余る案件があると出張っていって陣頭指揮してこれを解決するって仕事ですよね。これもひとつのグラマスというもののあり方なのでしょう。


メンタリストの語るところによるとヨゴレニンジャのジャッジメントにディプロマットを襲撃させたのはダークドメインとのこと。自身のネオサイタマ入り後にポータルを使用不可にして、ネオサイタマに独立した勢力圏を築こうとしていたとか。しかしこれは伝聞なのでどこまで信用していいのかわかりません。
メンタリストの語るダークドメインの思惑を信じたとして、ジャッジメント(の扮装をしたガンドー)に接触したグラッジの正体はだれなのでしょうか。
時系列順に考えると、ガンドー琵琶湖に沈む→ダメインがプリントアウトしたガンドーの写真を見せながらフジキドを煽る→ソイチとガンドーが決着をつける→シージトゥ〜のラストでディープスロートから最初の通信が入る→ジャッジメントに扮したガンドーが数件の任務をこなす→グラッジからディプロマット暗殺の依頼が、という流れ。ダメインが死んでからグラッジが接触してくるまでそこそこ時間が開いてます
ダメインが死んだ後も暗殺の指示だけが生き残っていて、ということもありえなくはないでしょうけれど、基本的にはディプロマット暗殺は他の派閥が計画したことで、暗殺失敗後に既に故人であるダメインに濡れ衣を着せたのだと考えたほうがいいでしょうか。ポータル転移の大きすぎる戦略的価値はどこの派閥から疎まれてもおかしくはないです。


なお、ネオサイタマ駐屯組の実質的な首位はマスターニンジャのワイルドハントでしたが、ワイルドハントさえ使用すると3割の確率で死傷するというポータルをとおってネオサイタマにやってきており公式に責任者というわけではないようです。
マルノウチ抗争の際はふたりのグランドマスターが帯同しましたが、インフレイム後のネオサイタマ急襲と統治はワイルドハント・アンバサダー・デスナイト・ボーツカイの4人のマスターニンジャによる共同作戦。やはりグラマスを長期にわたってキョートから離れた場所に置くのはまずいでしょうか。
ワイルドハントは派閥には無所属。ザイバツ上層部の派閥体質や腰の重さを嫌っていましたが、そのぶん苦労も多かったようです。ネオサイタマ行きにしても、キョートこそ世界の中心と思っているザイバツニンジャ立ちからすればネオサイタマは左遷先であり、部下のアデプトも腕は立つものの素行に問題がある奴が多かったです。
なおワイルドハントがダークドメインを後ろ盾としていたというよな記述もありますが、一方でダークドメインに向けてワイルドハントは初対面のような挨拶をしています。アキュミュレイションでダークドメインが率いたスゴイタカイビル包囲作戦の大部隊を、シージでワイルドハントが再編成して率いたことがマスター位階の分を超えた行為と見なされて、後ろ盾を失ったという表現が使っているのかなーと思います。
マルノウチ抗争と同様、ザイバツのネオサイタマ占領はドラゴン・ニンジャ探索のための拠点の確保のために過ぎず、その隠された目的は陣頭指揮を執るマスター位階のニンジャ達にも明かされていませんでした。
ワイルドハントの戦死後もザイバツの残存勢力はしばらくネオサイタマで頑張っていたようですが、HoE後はザイバツ崩壊とテンカンホーの消滅でずいぶん大変な目にあったようです。


・ニーズヘグ
ニーズヘグも普段何やってるのかよくわからないグランドマスターではありますけれど、作中で描かれていた任務はオミヤゲストリートへの緊急投入であり、バジリスク「フタツアタマヘビ」という名称のチームを組んでた時代からずっとそういう役割を続けてきた人なんでしょうかね。
同門で相棒だったバジリスクは、ヘルオンアース(下)の表には名前が無いものの、2部開始以前のバジリスクがザイバツヌケニンする前の時点にはマスター位階だったとしてもおかしくないと思います。


二部前半は派閥を作っていませんでしたが、その後ダークニンジャおよびシテンノの後ろ盾となり、ヘルオンアースでのムーホンの際も行動を共にしました。ダークニンジャがニーズヘグにかけた誘い文句は「俺が構えるイクサは、ロードが起こすイクサより遥かに邪悪で大きいだろう」でした。戦闘狂ですねえ。


・トランスペアレントクィリン
かつてグランドマスター位階の地位にあったトランスペアレントクィリンは、ヨロシサンとのコネクションを持ち、弟子のシテンノたちにそれぞれバイオサイバネの移植をさせ、自身も全身透明という常軌を逸した人体改造強度を誇ります。
またヴィジランス以前にキョート城のセキュリティシステムを管理していたのもクィリンであり、それゆえ秘密裏にキョート城のなかにヨロシサン用の秘密トンネルを建造することが可能でした。
弟子4名をシテンノという名誉位階に押し込む政治力はかつてのクィリン派閥の権勢を感じさせますが、あるいはシテンノはクィリン派閥からもやや独立した位置にあって、それゆえに師の失脚後も地位を失わなかったのかもしれないと思います。
クィリンは第二部開始以前にテンカンホーの影響下から脱し、シテンノを捨ててザイバツを去ると、そのままヨロシサンの重鎮の座に迎え入れられることとなりました。


一方、クィリンが去った後のザイバツ・シテンノは、どこかの派閥に属することなく無所属となっていました。ブラックドラゴンが懲罰騎士の地位にあり、アイボリーイーグルが拷問吏、レッドゴリラが武装シンカンセン警護の任務に就く一方で、デスド一味のオミヤゲストリート襲撃など戦力が必要な時に緊急で投入されるポジションでもあったようです。
シテンノの四人は仲間意識が非常に強く、ブラックドラゴンが死んだときは弟子のシャドウウィーブをパープルタコが引き取ったりしていました。


・ダークニンジャ
ダークニンジャはソウカイヤを抜けてキョート入りした後、ソウカイヤのキョート潜伏班を壊滅させて信頼を得てザイバツ入り。この際ダークニンジャの監視についていたのはミラーシェードでしたが、パーガトリー派やスローハンド派はマルノウチ抗争でダークニンジャと因縁があるためサラマンダー派のミラーシェードが選ばれたのでしょう。
その後はトゥールビヨンとともにパラベラムを討伐、そのままマスター位階ですらないのにトゥールビヨンを副官としてアンダーガイオン十三階層地盤ぶち抜き計画を指揮しています。このへんの、ザイバツの位階システムをすっとばした出世の仕方は不可解なんですが、とはいえ他のグランドマスターたちもヴィジランスを以外は地道に出世したのではなく、周りからグランドマスター以外ありえないと思わせて問答無用でグラマスになったんだろうなあと思います。
その後、デスドレイン一味のオミヤゲストリート襲撃に対処した功績で、ブラックドラゴンが死んだ後空位になっていた懲罰騎士の地位と聖なるガントレットの使用の許可、ホウリュウ・テンプル書庫の古代ニンジャ知識へのアクセス権を得ました。
またオミヤゲストリートで共闘したことがグランドマスター・ニーズヘグやシテンノと親交を深めるきっかけともなり、この突如出現した有力派閥はとくにパーガトリーとの間に確執を生むことになりました。
しかしダークニンジャの真の目的はあくまで折れたるベッピンを鍛え直すことと、己の運命と対決するための知識を集めることであり、最終的にはキョート城を誤った方法で使おうとするロードに対してニーズヘグやパープルタコ、それに元サラマンダー派閥のミラーシェードやバンシーとともにムーホンを起こすこととなるのでした。


まとめとその後

派閥視点からの第二部の主要なトピックはパラゴンのネオサイタマ政策とイグゾーションの死、ダークニンジャ派閥の形成、それにヘルオンアース。イグゾーションの死後、パーガトリーは旧イグゾ派を自派閥に吸収する一方、スローハンドはパーガトリーの追い落としを画策して総取りを狙っていました。


ザイバツ組織の内部には本来のキョートの支配者たちである貴族派閥と、ロードの下の秩序の中核としてのパラゴン・ヴィジランス・ケイビインのキョート城組があり、やや規模の小さい勢力としてキョートのヤクザ組織を支配していたサラマンダー派閥、そこに新たな有力派閥としてダークニンジャ派閥が加わることになりました。


他のグラマスと違い成立後のザイバツ組織の中で出世してグラマスとなったヴィジランス、ザイバツの歴史を頭から信じ込んで忠義を尽くすケイビイン、支配者としてのヴィジョンをとくに持たないパーガトリーはパラゴンのヘルオンアース構想に乗れますが、上流階級出身のニンジャによる支配を理想とするイグゾーションや、バイオ改造されたニンジャたちをサブジュゲイターで管理する昆虫めいた社会を目指すスローハンドはパラゴンとはどうしたって相容れなかったでしょう。というかスロハンはヨロシサンに取り込まれすぎでは。


ヘルオンアース後、崩壊したザイバツ組織はダークニンジャのもとに再編されました。ニーズヘグ・パーガトリー・パープルタコ・ミラーシェード・ランチハンドがこの新ザイバツに所属し、またネクサスをはじめとした新顔のニンジャやこれまでのザイバツでは評価されなかった無骨もののベテラン、いきのいい若手のニンジャもいるものの、さすがにその規模はかなり縮小されています。かつてのザイバツと比較してより実力主義の組織になっているのが特徴ですね。異次元を漂うキョート城がニンジャスレイヤーの物語の中に再び登場する日はいつになるのでしょうか?