ユーフォ見ましたメモ

響け!ユーフォニアム』1・2期見ました。
語るべきものがよく整理されていて、描写がフェティッシュで、演技や音楽がすごく、たいへん面白かったです。
学園生活のイベントあれこれに、それぞれの事情と伏流する感情が折り重なり、そこにさらに主人公の内心のナレーションが乗っかっていく、多層なレイヤーからなる思春期の物語ってとても好きで、そういうのが読みたくて少女小説や少女マンガを読み漁ってるわけですけど、その手の作品群の中でもひときわ心に残る作品でした。


思い返してみると、この世に生きること、愛と死、親と子についての話だったでしょうか。
オーディションに落選するのも、恋に破れるのも、奥さんを亡くしてるのも、この世のままならなさとして同一線上のものですよね。
覚悟が不十分のまま新しい過酷な原則・ルールが導入され、それを巡って部員たちが右往左往し、その中で様々な挫折が、そして意地や善意が描かれるあたり、漂流記ものやデスゲームものと同様の構造をもった作品といえますでしょうか。これは特に1期に顕著な特徴ですが。
1期では楽器類は戦わなければ生き残れないクソみたいなゲームに参加する意思の象徴として扱われてましたが、1期11話にて久美子が「わたしユーフォが好きだもん」というところに一つの結論を見つけ、2期においては人との絆・この世に愛がある証として扱われるようになってました。
1期と2期の違いでいうと、1期はもう子供ではいられないって話でしたけど、2期は大人ぶってもしょうがないという話なのが面白いですね。


おおむね、この世界は夢もロマンもない弱肉強食のろくでもないところで、人間は断りもなく親によってこの世界に誕生させられ、さまざまな壁にぶつかって挫折しては苦しみ最後には死んで終わるんだけど、それでも生まれてきた以上は腕試しをしたい気持ちもあるし、世界には良いところもあって、それは愛と芸術である。また、ろくでもない世の中に多少はひとにやさしくできる場所を確保するために頑張ってるやつは立派なやつである。ただし、共同体に寄せすぎて自分の意思を抑圧してしまっては元も子もない、という話だと思いました。


以下各キャラについて
久美子:世界に夢もロマンもない事(世界観の横軸)を理解してる奴。でも新しい何かを見つけたくて北宇治にやってきた。1期ではうっかり特別な存在にあこがれるも見事挫折(でもまだチャンスはあるぜ)、2期では師匠筋の姉貴分からこの世に愛のある証である楽譜を受け継ぐ。


麗奈:弱肉強食のこの世の理(世界観の縦軸)に順応してるやつ。特別な存在ってのはつまり勝者、トーナメントで2位以下の奴らは等しく敗者だけど唯一1回も負けずに優勝したやつ、人を憧れさせ、時に絶望させるもの、そういったものですよね。


滝先生:吹部の部員たちを戦わなければ生き残れない環境に、認識が甘いのを承知で叩き込んで右往左往させる奴。分類すると一種の悪役で、ミリアサのマーリンやまどマギキュゥべえとかの同類。吹部の講師をしている理由が妻を失ったことの代償行為なあたりこいつもまた迷いの中にあるのだろう。


あすか:世界がちゃんとしてないことに向き合って生きてきた結果出来上がった人格であり、世界の娘。1・2期通してのラスボス。


香織:滅び去った共同体の盟主。こいつが世の中には誇り高い敗者が存在することを示したので、オーディション以降は麗奈の態度がやや軟化した。


晴香:同床異夢の部員たちをまとめて共同体を維持し、夢もロマンもない弱肉強食の世の中でちょっとでもやさしくなれる場所を確保するためにコストを払い続けてる立派なやつ。ブギーポップに感謝されるタイプ。


葵:損なわれてしまいもう二度と返らないもの。滝先生は葵・晴香・香織には謝ったほうがいい。


麻美子:共同体に順応しすぎて自分の意思を抑圧してしまい失敗したやつ。


みぞれ:愛のない世界に生きる恐怖を背負ったやつ。


優子:優子の抱いていた美しい幻想は前提となっていた共同体のあり方が変容してしまったために滅び去るしかなく、でもそれを認めるわけにはいかなくってじたばたした挙句結局だめで大泣きする羽目になった。あの泣き声は現実よって幻想を破壊された悲鳴であり、クソみたいな世界に生まれなおす羽目になった赤ちゃんの産声である。幻想を抱いてしまったことは油断であるが、油断できる瞬間を得ることは人生の目的であるとさえいると思うので責められるようなことではない。また一方で、あの大泣きは損なわれてしまったものにどれだけ価値があったのかを世界に突きつけるためのものでもあり、香織先輩の失われた夢へのせめてもの手向けであり慰めである。また、中世古香織に対しても鎧塚みぞれに対しても、吉川優子の愛は対して役にも立たないし、愛が報われるわけでもないんだけど、底が抜けたバケツ(しかも複数)に愛情を注ぎ続けられることが吉川優子の凄さである。そんな吉川優子が次期部長に指名されるのは納得の展開で、デカリボンはあいつの幼児性の表れであるとともに王の宝冠でもある。


夏紀:流されやすい女である夏紀はすなわち部の総意を体現する存在であり吹部の精霊といえる。また、あすか先輩の代役を務めるなど、代替の可能性でもあり、ミリアサのモードレッド的な吹部の審判役ともいえよう。


緑輝:小さな戦士川島。


秀一:百合アニメにでてくるヘテロ好きです。


原作にも手を出してみたいとこですが、2年生編についてはアニメを待つべきか原作を読んじゃってもよいか悩ましいですね