ダークホルムの闇の君

ダークホルムの闇の君がハードカバーで出るんだってさ!
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ダークホルムの闇の君 (創元推理文庫)

ダークホルムの闇の君 (創元推理文庫)

異世界からやってきた資本家に世界全体を支配され、主人公パーティーとしてやってくる観光客たちに探索の旅を体験させるために無理やり戦争とかさせられてる世界の話。ラスボスにしてツアー全体の管理者「闇の君(Dark Lord)」に任命された魔術師ダークとその息子ブレイドが右往左往したりひどい目にあったりするぞ。
ダイアナ・ウィン・ジョーンズファンタジーランド観光ガイド』isbn:4887216378ソード&ソーサリーの世界を舞台として、某ネズミーランドを逆転してディストピア化させるとともに一本一本のRPGの裏には斯様なデスマーチが繰り広げられてるんだよってことをファンタジー的に再現して見せた、爆笑痛快メタ・ファンタジーなんだ。
英国ファンタジーの偉い賞であるところのMythopoeic Fantasy Awardを『ハリー・ポッターと賢者の石』を蹴落としてゲットした作品でもあるぞ!


ジョーンズお得意のひねった設定の下で主人公がひどい目に合い続ける話だけど、エピソード密度がやたら高くて、どたばた系のジョーンズ作品では最高峰といえるんじゃなかろうか?
闇夜に襲い来る空飛ぶ怪物の正体や、NPCの雇用条件と言った内幕が暴露され今後ハイファンタジーがまともに読めなくなること請け合いだし、1/3も進まないうちにツアー全体の管理者であるはずのダークがまる焼きにされて行動不能になるなどトラブルぶりもいつも以上(に笑える)。
一方で凄惨な戦争シーンや泣ける家族の物語が要所で挟まるのでけして軽いばかりの話でもないぞ。
残念なのは訳文かな。硬すぎるのか詰め込みすぎなのか、どうも状況のイメージが沸きづらくて物語に入り込みにくい。今なにが起こってるのかを意識しながら読むとよいかも。グリフィン踊りとか空飛ぶ豚の大群に跳ね飛ばされる大学総長とか軍隊に号令をかけるドラゴンとかなんでそんなことに?みたいなイメージが頻出するところも作品の魅力なのでね。
あと主要登場人物は読む前に把握しといたほうがいいかも。以下割と主観。


ダーク
視点人物その1。自分と奥さんとワシとライオンの遺伝子を組みあわせてグリフィンを作り、自分の子どもとして育てちゃうマッドサイエンティスト。いやまあ、いいお父さんなんだけどね。自分の研究がまったく理解されなかったので大学が嫌い。闇の君に任命されてからは、家族ともどもに世界中を飛び回り続けるハメに。
マーラ
ダークの奥さん。とても有能な魔法使い。学生時代からダークの価値を認めていた物好き。でも闇の君の仕事が始まってから妙に冷たいぞ。離婚の危機か?
ショーナ
一番上のお姉ちゃん。両親に吟遊詩人を目指すことを認めさせたばかりだ。弟妹を操るお姉ちゃん能力はなかなか高そう。
キット
お兄ちゃんグリフィン。現在15歳思春期真っ只中で危なっかしい。黒くてすごくでかい。頼りになるけど少々血の気が多いぞ。戦争の指揮では大活躍する。
カレット
お姉ちゃんグリフィン。ブレイドとほぼ同時刻に生まれた。キットとは馬が合わない。頭がよくて手先が器用でそのうえ美人だぞ。
ブレイド
視点人物その2。息子にして弟。カレットとほぼ同時刻に生まれた。キットに懐いている。魔法の才はあるのにお父さんがが大学進学を認めてくれないのは不当だと思う。デウカリオンて誰さ?観光団の最終組の先導魔術師を任されるが、つけ髭がにあわない。致命的なことに方向音痴だぞ。
リダ
妹グリフィン。ドンと双子。食べ物は食べるのも作るのも好きだ。でも太りすぎなのはちょっと気にしているぞ。隠れた意外な才能が?
ドン
弟グリフィン。リダと双子。影が薄いぞ。たぶん要領がよくて逃げるのがうまい自己中心的な性格。
エルダ
末娘グリフィン。女の子。落ち着きがない。エルダの遺伝子にはライオンでなく猫を使ったので他のグリフィンよりは小柄なんだ。
ケリーダ
視点人物その3。冷酷ヘビばあさん。チェズニーの横暴を食い止めるために大学総長、つまりは全魔術師の下締めに選ばれた。問題学生だったダークのことが嫌い。好きな動物は猫とヘビ。
ウロコ
馬鹿でかくてやたら年をとったドラゴン。歩け、屑め!
チェズニー氏
強力な魔物を操り魔法世界を支配する異世界の事業家。名前はディズニーのもじり。


いやすげえ面白いんだこれ。おすすめです。