狼と香辛料、そしてひげ

狼と香辛料 (電撃文庫)

狼と香辛料 (電撃文庫)

あらすじ→中世の終わりから近世のはじめくらいのヨーロッパっぽい世界が舞台。そろそろ世の中から必要とされなくなってきた古代の神さまと根無し草の行商人がアウトサイダーの寂しさを分かちながらまったりといちゃつく話。あと金融ネタの陰謀にかかずらわったりする。


買ったのは発売初日だったんだけどいまさら感想。香料貿易とか文化人類学的ななんかとか大好きなので、題名見た瞬間ピンと来て購入。趣味合いすぎで悶える。きっつい。いやスゲー面白いんだけどさ。


さて、すでにいろんな感想で言われてるけどとにかくホロがかわいい。耳としっぽを効果的に使う真面目な獣少女っぷりもさることながら、やはり人生経験値高そうなあたりが魅力的です。ホロの態度からは、“嬉しがってあげよう”という彼女の意思が感じられ、脊髄反射的に反応を返す小娘ではないことがわかる。そして、そんな彼女に嬉しがってみせてあげようと思っていただいたことがありがたく、またそれだけの評価を受けたのだということが誇らしいと。


ところで、色々回ってみたけれどどうもあまり言われてないみたいなんですが、主人公のロレンスってラノベの主役キャラとしてはかなり革新的な設定が付与されてますね。
ひげがあるんですけど。
ことラノベにおいて、付け髭や無精ひげでなく、ノーマルな状態でひげのついてる主人公は極めて珍しいはず。てゆうかほんとに皆無なんじゃないかしら。俺は知らんですよ。
サブキャラならカッコいいひげキャラも認知されているでしょう。けれど作品の主人公のような唯ひとりの誰かとなると、ひげは許されないらしい。読者の視点となるタイプの主人公だったら、ラノベの主要な読者層は中高生なわけで、感情移入のしやすさという点でわからんでもないです。けれど、たとえばリアルバウトハイスクールの南雲先生みたいなヒーローとしての主役キャラにおいても、ひげのあるキャラは見たことがない。
そもそも日本て諸外国と比べてひげの薄い文化な気が。もちろん鎌倉以降の武家社会とか明治時代とかには日本でもひげが流行してるんだけど。人口当たりひげ率とか各国の偉人当たりひげ率みたいな資料はないもんですかね。
さて、そうして考えてみるとたいして主張の強くない短いあごひげとはいえ、ロレンスのひげは「ひげ革命」とも言うべき大事件なのではないかという気がしてきます。
もしも『狼と香辛料』がバカ売れすれば、編集が「そうか!主人公はひげでもよかったのか!!」となってひげ主人公が解禁されるのではないか。そうしたひげラノベを呼んだ中高生を出発点として、日本人のヒーロー観を革新することが出来るのではないか。そんなひげ色の未来が脳裏に浮かぶのですよ、ええ。
そんなわけで、全国のひげ好きはクラーク・ゲーブルみたいな主人公の出てくるラノベが出版される日を夢見て『狼と香辛料』を大人買いしまくるべきだと思いました。おしまい。