カナスピカ読了

カナスピカ

カナスピカ

序盤多少かったるかったり、中盤リアリティのレベルが不安定だったりするけど、でもそのへんの失点を補ってあまりあるラスト数ページ。世の中にはまとめとか解説が無意味になる領域てのがあります。まったく個別の、それそのものとしてしか評価できない、素晴らしく素敵な。
いいから読め、てやつだぜい。


以下カナスピカを読んで思った3つのことだよ

その1。
日常の豊かさとか言って今までと何が変わったわけでもない世界に対してなんでこんな好意的な態度が取れんのよーて言うたときのひとつの答えとしてカナスピカはあると思う。


なんで世界は美しいのか、なんで僕たちは生きていけるのか。それはカナスピカと、カナスピカと同じだけの価値を持つものが世界にはきっとあるからで。
カナスピカとは、それがあるだけで日常が輝きだすそんな何か。世界を再生するもの。僕らにはちょっぴりの恋とファンタジーが必要なんだよ、ていうお話。


具体例を挙げてみると「あんたがいる世界なら」fromエビアンワンダーとか。
もちろんもっとささやかなものでもいい。最近のぼくのドリームでファンタジーなマイフェイバリットシングはコトブキヤコマンドウルフさー。


その2。
時をかける少女とか道士郎でござるとかもそうだけど、カナスピカも手が届かないくらい遠くにいる誰かの話であり。


他人がいなけりゃ自分もいないものであり、自分の全てが自分の中におさまっている間は本当に自分のしたいことだってわからなかったりする。
マンガに出てくるような変態さんほどに確たる信念を持たない僕らは世の中にただ一人放り出されて自分のことは自分で決めろとか言われてしまうと、すっかり自分を把握できなくなってしまって、自分が何をすべきなのかどころか何がしたいのかさえわからなくなっちまう。ただ場当たり的な欲望に流されるだけで。


けどだからって昔の世の中に戻るわけにもいかないし、そんなときの新しい方策としてのカナスピカ。自分の一部を預けてしまったような大切な誰かを簡単には手に届かないほど遠くに置き、けれどそれほど大事でそれほど遠くにいるからこそ、いつもぼくらのそばにそいつはいて、ぼくらに自分てものを取り戻させてくれるのではないでしょうかと言う、要は新種のライフハックの提案なのです。


その3。
さてさて。カナスピカの一方に日常系のラノベ暗闇にヤギを探して神様のメモ帳世界平和は一家団欒のあとに狼と香辛料ほか)を置き、他方に森絵都を置くと完全にラノベと児童文学はシームレスになって、そんでジャンル“ライトノベル”の独立によって存在感を失っていたジャンル“ヤングアダルト”の復興が、ようよう完了したのではないか、とか。どうか。


ここ何年かの間に刊行が始まったYAレーベルを適当に挙げてみる↓。
YA!フロンティア http://59.106.27.67/products/series_338_1.html
YA!ENTERTAINMENT http://shop.kodansha.jp/bc/books/ya-enter/
ミステリーYA! http://www.rironsha.co.jp/Mystery_YA/
ミステリーランド http://shop.kodansha.jp/bc/books/topics/mystery_land/
講談社BOX http://shop.kodansha.jp/bc/kodansha-box/
創元ブックランドhttp://www.tsogen.co.jp/bookland/
ハリネズミの本箱http://www.hayakawa-online.co.jp/harinezumi/


それはそうと、なんだってみんなYAに!をつけるんだろうね。