1293855949*俺ベスト2010、その1〜5位+α
2010年にあたらしく発表された作品とそれに順ずる作品からベスト5と、そのほか印象に残った作品をいくつかピックアップしました。
ベスト作品部門 第1位 『男子高校生の日常』
- 作者: 山内泰延
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2010/02/22
- メディア: コミック
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ネタ自体も面白いですが、面白さの根っこは作品の空気、作者の世の中というものへの理解のありかたです。これが実に快適でなー!
そう、人は成長せず!世界は罠に満ち!男子と女子は対立し!思い出には裏切られ!気持ちが通じ合うこともない!いわゆる「日常系」の作品などに描かれた青春模様に対して、吉野家コピペみたいな反応をしてしまうオレ達にとっての心の故郷なのだぜ?
既刊3巻で尻上がりにクオリティ上がるのでヨロシクです。
ベスト作品部門 第2位 『ヒックとドラゴン』
ヒックとドラゴン ボーン・クラッシャーの伝説エディション [DVD]
- 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
- 発売日: 2010/12/17
- メディア: DVD
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ストーリーは極めて類型的です。まだなにものでもない男の子が、メカあるいはモンスターないしその両方と出会い、冒険の末にみんなから認められ女の子もゲットするわけです。でも、この作品ほど磨きぬかれた、過不足のない、パーフェクトに完璧な作品ってそうそうありません。
『天空の城 ラピュタ』や『デジモンアドベンチャー』や『突然!猫の国 バニパルウィット』がそうであったように、子供時代に出会えば一生の宝になったであろう名作です。
もちろん大人が見ても、ヒックは不遇でも腐らない好男子だし、ヒロインはかわいいし、飛行シーンは大迫力だしで、すげえ面白いですよ!
ベスト作品部門 第3位 『ドントクライ、ガール』
- 作者: ヤマシタトモコ
- 出版社/メーカー: リブレ出版
- 発売日: 2010/07/09
- メディア: コミック
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ヒロインの友人の「たえ子 ひいてはダメよ 少女マンガのヒーローはちょっとキツいくらいの変態がちょうどいいのよ」という台詞にも表れてますけど、実は少女マンガ的ロマンのコアをはずしてない、というか正確に射抜いている作品です。いやもうここまで正確に射抜かれるとですね、ロマンというか、むしろ神話?女子高生のための神話がここに現出してますよ?
世の女子の皆さんと、それから心に乙女ドライブをもつ少女マンガ男子諸兄ならば、ヒロインを応援・心配する友人たち(最終話)と感情をシンクロさせて、おおいにテンションを乱高下させられることでしょう。
ベスト作品部門 第4位 『生活【完全版】』
- 作者: 福満しげゆき
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/05/21
- メディア: コミック
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しかし通り魔の出現率がすげえ高い街だな!「話が通じない人」の表現がたいへん説得力溢れていて、それが作品の凄みにつながってます。
現代日本社会(ウシジマくんよりの世界観)における、仮面ライダーやバットマンみたいな正義の怪人と、悪の組織の誕生を描いた作品でして、でもこの作者ならではの小規模さというか、みみっちさというか、地に足のついた描写が共感を呼ぶのです。それでいてかっこいいですしね。袖口に仕込んだカーテンレールを通って金槌が飛び出すギミックだとか。アレはすげえ真似したくなります。
ベスト作品部門 第5位 『スコット・ピルグリムvsザ・ワールド』
- 作者: ブライアン・リー・オマリー,石川裕人,御代しおり
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2010/12/10
- メディア: 単行本
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いわゆるアメコミのイメージとは全然違って、ディフォルメ度の高いキャラクターと大胆な大ゴマと高い演出力を持ち、なんつーか柴田ヨクサルとウエダハジメが合体したような作風です。
変なセンスも売りですが、それにあぐらをかかずにきっちり少年マンガ的なエンタメをやっていてたいへんに面白いのです。
また、作品の描く空気、カナダのバンド青年とその友人たちの、孤独と喧騒、出会いと別れ、愛と揉め事に溢れた若者たちの世界も見所です。日本のマンガだとあまり見つけられないノリなので。
ベスト作品部門 次点 『おまえうまそうだな』&『REDLINE』
- 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
- 発売日: 2011/02/04
- メディア: DVD
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- アーティスト: サントラ
- 出版社/メーカー: good-beat.com
- 発売日: 2010/10/06
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ベストキャラクター部門 安田貢広(『保健室の死神』)
- 作者: 藍本松
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2010/12/03
- メディア: コミック
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安田はトラブルメイカーとしての作劇上の機能に徹するプロ脇役であり、学園コメディにおいてときどき引っ張り出される飛び道具的なキャラです。同じジャンプ連載の『スケットダンス』で言えば早乙女浪漫ですが、メタ系能力のポテンシャルが高すぎて作者的にも扱いかねている場面もある浪漫に対し、安田は超強力な物語牽引力を持ちながらも作者の藍本先生の制御がゆきとどいてます。登場エピソードには作品の全要素がよく噛みあって一体となった、神がかり的な面白さが生まれてました。
そのほか、『ノノノノ』の岸谷弘樹が溜めて溜めて溜めて……ずっこける、その鉄板さは安田に肩を並べるものがありましたし、劇場版『カラフル』の主人公のお母さんとそれを描くスタッフの舐めるような視線も忘れがたいですね。
ベスト完結部門 『召喚教師リアルバウトハイスクール』
召喚教師リアルバウトハイスクール19 (富士見ファンタジア文庫)
- 作者: 雑賀 礼史,いのうえ空
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2010/07/17
- メディア: 文庫
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『シグルイ』『フルメタル・パニック!』『鋼の錬金術師』『のだめカンタービレ』と今年もたくさんの名作が完結を迎えましたが、その中でベストを選ぶとしたらこれ。
リアルバウトは中盤ちょっと迷走気味だったんですが、富士見ファンタジアの黄金期を支えた作品として恥じるところのない、見事な完結を見せてくれました。なんといいますか、「富士見ファンタジアってスレイヤーズとオーフェンとフルメタ以外に見るべきものってあるんですか?」と脳内仮想敵くんに問われた時に、どのくらい全力の全開で反論できるかが、09年に完結した『封仙娘娘追宝録』と『召喚教師リアルバウトハイスクール』の行方にかかっていたのですが……最終巻だけなら富士見のオールスターズで一番面白いんじゃないかと思います。マジで。
いろんな異世界・別時代に散らばった生徒達を集合させるための異世界めぐりというかたちで、バトルFT・SF活劇・学園コメディ・中華ノワールといったてんでばらばらなジャンルが狂騒的に入り混じる終盤の展開は、もともとハイブリッドなこの作品の「らしさ」の正当な発展形でありました。また、ライトノベルが、そして学園ものというジャンルが、その魅力や役割を果たすために排除してきた親子関係の縁を繋ぎなおしていく最終巻には心うたれます。ダブル主人公の片割れが、未来から過去までの全ての情報を収めたライブラリーに取り込まれ(まあ人類補完計画的な何か)て疑似的な時間移動をした先でヒロインの亡くなったお母さんと出会い、その場で土下座して「娘さんを僕にください!」ってやるんですよ。その設定そう使ってくるかー、ええ話やー。
というかこの土下座した彼、「時をかける番長」こと草薙静馬くんがやることなすことむちゃくちゃかっこよくてな!これが成長型主人公の最終巻での姿か!
その他のベスト候補、ほか
そのほかのベスト候補としては、『ベティ・ザ・キッド』・『7と嘘吐きオンライン』・『真夜中のギター』(カバー)・『特攻野郎Aチーム』・『まおゆう魔王勇者』・『ハルシオン・ランチ』・『伝説兄妹!』・『風雲戦国伝 風雲児たち外伝』・『トイ・ストーリー3』・『花に染む』
と言ったところでしょーか。
それから昨年のベストはこちら↓
http://d.hatena.ne.jp/hatikaduki/20100102/1262447302
去年の取りこぼしで一番でかかったのは「耳刈ネルリ」シリーズでした。ライトノベルっていうジャンルのポテンシャルをめいっぱいに使った異文化コミュニケエンターテイメント。古橋秀之のケイオスヘキサ3部作に並ぶラノベ史上の傑作だと思います。
- 作者: 石川博品,うき
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2009/01/30
- メディア: 文庫
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2011年に刊行される作品で今から楽しみなのは、とりあえず1月発売の『コップクラフト』の3巻です。フルメタを完結させた賀東招二の異文化コミュニケバディムービーラノベ。1〜2巻は竹書房Z文庫版の加筆修正版でしたからね。
それでは本年もよろしくお願いいたします。みなさんによい本との出会いがありますように。