このライトノベルがスゲエ!2011年愛しの12作

昨年は面白いラノベをたくさん読んだので、ラノベでベストをやってみます。あと10個にしぼるとかそういうのはオレもう諦めましたから!

1位 ニンジャスレイヤー

http://twitter.com/#!/NJSLYR
http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/
http://www10.atwiki.jp/njslyr/

ハイすいません!書籍化されてない作品を選ぶのはどうなんだというご意見はわかります。でも別に書籍化前提のtwitter連載じゃないし、これも作品としての完成形のひとつだと思えば、OKだと思うんですよ!
内容はサイバーパンク・ニンジャ活劇、近未来日本の首都ネオサイタマを、血と怨念をまといし復讐者、“ニンジャを殺すニンジャ”ニンジャスレイヤーが駆ける!手を変え品を変え繰り出される超常のアクション、描かれる人間の弱さと人生の愛しさ、そしてそれを表現するクレイジーな言語表現に、燃えて・泣けて・笑える、超弩級の傑作なので断然おすすめです!
最初に読むなら番外エピソードの「ナイト・エニグマティック・ナイト」などがよいでしょうか。http://www10.atwiki.jp/njslyr/pages/26.html
さらに詳細はこないだ書いたこっちのエントリにありますので是非→“イヤーッ!実際傑作、「ニンジャスレイヤー」!!”http://d.hatena.ne.jp/hatikaduki/20111224/1324693179

2位 魔術士オーフェン

2位はついに開幕したオーフェンの完全新作。かのラノベ史上の名作「魔術士オーフェン」が、その手触りを変えることなく、しかしさらに磨き上げられて帰ってきました!2011年に手に取ったいろんな作品たちの中でも、ニンジャスレイヤーとオーフェンはちょっとつき抜けて名作でしたねー。
ベテランの確かな筆致によって描かれるのはいまや中年となったオーフェンと、彼の3人の娘たちをはじめとした新世代が直面する新たなる戦い。
ちなみにシリーズの「第四部」に相当する物語なんですが、「第三部」はありません。それも作者らしいといいますか、個々に独立した面白い挿話・ホラ話が重なり合うことでやがて巨大な一枚絵をなしていくのが、オーフェンのファンタジーとしての名作たる所以だと思います。なので、第四部から読みはじめたってぜんぜん問題ないですよ!
重なり合う挿話、ふりつもる時間、躍動する物語、確かにそこに見える世界、そして確固としてそれぞれの人生を生きるキャラクター達!かつてオーフェンは90年代ラノベFTの完成形として存在しましたが、ならばこの新シリーズはラノベFTの理想形のひとつと言えましょう。ひとつの世界を描くことの旨みに満ちた和製FTの傑作であります。

3位 僕は友達が少ないのうりん

僕は友達が少ない 7 (MF文庫J)

僕は友達が少ない 7 (MF文庫J)

同着で2作品。どちらの作品もプロフェッショナル・ライトノベル作家の価値を世にを示した作品であると思います。
字で書いたマンガってな言い方がありますけど、マンガ文化をきちんと尊敬し、表現方法として文字媒体を用いながらも、マンガみたいな表現にこそ向いた題材を選び、しかしてマンガの土俵に立った上でマンガを超える!この矛盾を乗り越える意思がラノベの面白さのひとつの源泉なんだと思うのです。
そうしてみたとき“はがない”という作品の、伝えるべきことを見定めト書きに近い形に絞り込まれた文章と、巨大フォント・顔文字・変形段組をちりばめた文面は、読解時の情報の伝達から感情励起にいたる反射速度を、マンガのコマの変形による演出や、そのほかアニメやスポーツ中継などの視覚的媒体による反射速度と同等のものとしていて、作者の積み上げた工夫には尊敬の念を抱かずには入られません。自分は5巻での志熊理科の血を吐く巨大フォント絶叫ツッコミを眼にした瞬間の0.01秒で理科派に転んだんですよ!アレは実際アートです!
のうりん 2 (GA文庫)

のうりん 2 (GA文庫)

一方でのうりんは、その文章上の工夫においてもはがないに近いものがありますし、イラストレーターとの連携の確かさとそれによる衝撃力の増大においてはラノベ史上最強クラスです。また特筆すべきはその取材力。作者個人の知識や文献によった調査ではなく、事前におこなった取材が背景にあることがわかるライトノベルってあまりないっつーか、寡聞にして自分はほかに知らんので、この作品がヒットするのはライトノベルってジャンル全体にとって非常によいことだと思います。
しかもその取材をきちんとぶち壊しに出来る意気もあるしな!農業高校を舞台とし、農業を志す若者たちの成長を描きながら、2巻などは内容の9割がパロ!主人公の一歩先を行く人物を農林四天王(←当然のように5人いる。しかも全員が良キャラ)として登場させるなど、少年マンガのパロディーを主体とすることで9割パロでも成長物語として成立させてくる作者の技術と発想は驚くべきものであり、実際読んで自分は声だして笑いました。シリーズ冊数もまだ少ない今のうちが手を出すチャンスだ!

5位 ミスマルカ興国物語

ミスマルカ興国物語 IX (角川スニーカー文庫)

ミスマルカ興国物語 IX (角川スニーカー文庫)

小国の王子を主人公とした林トモアキの軽快なハイファンタジー。もともと作者が天才なんですけど、第二部では大規模な敵味方シャッフルを行ない面白さがさらに加速、作者の才能が冴えまくっております。
異世界に異物として現代文明の産物を持ち込みなにかしら面白さを発生させるというファンタジーの技法がありますけど、ミスマルカには滅び去った文明の遺産としてバイクが持ち込まれます。中原の荒野を疾走するこの基本的に一人乗りの機械にまたがった時、ゆき過ぎた賢明さと王子という立場、父王の時代からの様々な因果によってがんじがらめにされたマヒロ王子、飄々として時に冷徹にも見える彼の、若い魂の燃焼があらわになり、胸を打つんですよねー。
そして9巻でそのヴェールを脱いだ帝国第一皇女・超弩級お姉さまシャルロッテな!横暴姉好きならマストだぜ!

6位 翼の帰る処

この辺から順位があんまり意味なくなってきます。実際団子状態。
『翼の帰る処』というFT作品の特徴として、あんまり戦わないところがあります。役人FTなんですよね。辺境の領主として赴任してきた皇女に副官として抜擢された有能病弱主人公のヤエトが、なにか問題があったっちゃしょうがないから病弱なのをおして出かけてゆき、ひとあたりのよさと過去視の異能を用いて問題解決の道筋をつけ、ついでにコネをつくり、最後はぶっ倒れて強制送還されます。
ヤエトと皇女と騎士団長ルーギンらとのあいだには、家族的というにはお互い立ちいれぬ部分がありすぎるけれど、でも確かに存在するあたたかいつながりがあります。くわえて、背景となる“北領”の峻厳な山々とそこに暮らす人々、そして愛すべき鳥たち、それらみんなをひっくるめたものが、タイトルである“翼の帰る処”として言い表されているのですね。
世界描写・魔法描写・社会描写・人物描写がみんな面白い、高値安定の「いま面白いファンタジー」筆頭であります。

7位 姫婚オールアバウト

姫婚オールアバウト (コバルト文庫)

姫婚オールアバウト (コバルト文庫)

ゆえあって市井で暮らしているお姫さまの婿取りの顛末を描いた野梨原花南の創作メルヒェン。
ちなみに僕は野梨原花南という作家がすごい好きです。だいたい名前がかっこいいよな!いずれ世界的に売れてくんねーかなーと思ってるんですが。
さておき、野梨原花南はいままでにちょーシリーズやマルタ・サギーにおいて、平易な日本語で記述されたいろんな素敵な魔法の呪文を創作してきたんですけど、本作で描かれた、「私の名はレッカ・マーラート・ファルサンといいます。」という自己紹介にはじまるシンプルな呪文はその到達点のひとつであります。
まーちょっと書きとばしすぎなとこもある気もしますが、気風のいい女の子のまっすぐな心意気も気持ちの好い、この作者らしい作品で、自分としては好きにならずにゃいられないお話です。オチがまた良いんだー!

8位 灼熱の小早川さん

灼熱の小早川さん (ガガガ文庫)

灼熱の小早川さん (ガガガ文庫)

エンタメ性が強いものにせよヤングアダルト文学的なものにせよ、ライトノベルは基本的に反体制的なものなんですが、この作品は主人公がクラス委員を任されていろいろ大変な目に合う話で、珍しく体制的なライトノベルであるといえます。
委員会はサボらないほうがいいとかネットは怖いもんだとか、極めて教育的な内容でありながら、同時に基本構造はメガネっ子ヒロイン(狷介な性格が萌える)の涼宮ハルヒだし、クラスメイトも悪者にし過ぎないバランス感覚があって、共感できるしエンターテイメントもしてます。そんなことできんのか、と度肝を抜かれました。リアル高校生に読ましてやりたい。作者の卓越した技量のなせる業ですね。
『7と嘘吐きオンライン』のHEROでコミカライズ希望します!

9位 クズがみるみるそれなりになる「カマタリさん式」モテ入門

ラノベ史上のオールタイムベストな傑作「耳刈ネルリ」シリーズの石川博品の新作。
「あまりにぶっちゃけすぎの男子の欲望にSF設定使ってレッツトライ!」「クズがクズすぎてえんえん失敗しつづける天丼ギャグ」「あまりにも正攻法な非モテ脱出方」「別世界からの来訪者っつーかFキャラの完全再現」「少年に訪れる出会いと別れと恋心オーバードライブ」の諸要素がどれも面白くて、でもそのぶん要素が多すぎるもんでとっちらかって物語出力が落ちてるのが惜しいところかな。でもリアル高校生に読ましてやりたい、すごくストレートで胸うたれる青春小説なのです。
相変わらず言語センスは天才。好きなカマタリさんの台詞は「試着をしていますからナ!」「餅は餅屋といいますがナ!」「アア、オミヤーギ――それはあこがれ」です。
つーかカマタリさんの語りがアートすぎるのです。美少女型ドラえもんというジャンルのキャラは多々あれどこれほどコンセプトに忠実かつキュートって信じられません!ぬおー、続編よ出ろ!

10位 丘ルトロジック

強化型ハルヒとでもいえましょうか。アメコミの怪人みたいな先輩たちと一緒になってツチノコを捕まえたりヤクザや通り魔と戦ったりします。『アンブレイカブル』とか思い出しました。
ブギーポップ直系のライトノベル青春文学としても十分によく出来てるんですけど、神が宿ってるのは屈折した年若きナードたちの孤独で峻烈な魂を鎮めるためのライトノベルとしての側面においてでして。具体的に言うと趣味の濃さで圧倒してサブカル女子に尊敬されたい!とか、その女子を放置プレイして自分は男友達とイチャコラしたい!とか。いや実際、話は面白いし、咲丘くんはマッドでカッコいいし、江西陀さんはおっそろしく可愛いのです。特に江西陀。フィクショナルなのに生っぽくて。あとこれもネット怖いって話ですねー。

11位 恋物語

恋物語 (講談社BOX)

恋物語 (講談社BOX)

サブヒロがラスボス化してどうすんだこれと思ってましたが、詐欺師のオッサンが出てきてこじんまりと解決しました。ハードボイルド(読み:オッサン向けドリーム小説)にして、中2女子のひと冬の黒歴史の記録でありました。ちょっとしたことに大袈裟になるのもまた青春ですよね。
けれど、そんな話であったほうがきっと、物語的に盛り上げてヒロイックに解決するよりもずーっと、登場人物たちの人生を豊か彩っていく忘れがたい記憶になるのだろうなーと思えるのです。つかはじめて撫子かわいいと思いましたよ。よい話でした。

12位 伝説兄妹!

伝説兄妹 3! (このライトノベルがすごい!文庫) (このライトノベルがすごい!文庫)

伝説兄妹 3! (このライトノベルがすごい!文庫) (このライトノベルがすごい!文庫)

やっぱ3巻ラノベは傑作ぞろいだな!打ち切りなような気もするけど!
ダメ人間系大学生が拾った女の子が神さまで、商売の道具に使おうとしてしっぺ返しくらったり、モテを目指していたらいつの間にかバイオハザードが起きたり、山奥にある妹村の選挙戦で暗躍したりと毎回手を変え品を変え楽しませてくれました。主人公が最後まで徹頭徹尾ヒロインを“女児”としか認識していないところがよかったですねー。イラストもよくあってる!


こうしてみると思ってたよりずっとヒロインに萌えてますね自分。意外とちゃんとラノベ読者やってたようでよいことなんじゃないでしょうか。
今年も面白い本にたくさん出あえますように!さしあたっては龍盤七朝の新作だ!