2014年の面白かったもの

14年の新作ではありませんがとりあえず『アイカツ!』は挙げておきます。

劇場版アイカツ! 豪華版 [Blu-ray]

劇場版アイカツ! 豪華版 [Blu-ray]

今が流行りのアイドルアニメの一つ。アイカツのイッキ見はこれまでの我が人生でもとくに価値のある行為だったと思います。
児童文学的な教導的性格とギミックに頼らない堅実な作劇の一方で、斧に象徴されるやりすぎ感・どうかしてる感と異質なライブパートの挿入による気分の高揚があり、そして基本一話完結かつライブパートに尺を取られるが故に登場人物が悩んでもドラマまでそれに付き合うことなくテキパキ問題を片付けていくサクサク進行が魅力的だし、個人的に非常に肌に合いました。女児どもがみんな楽しそうに日々頑張っており、良いです。
キャラ格の上げ下げが物語と密接する少年マンガ的な側面も持っているのですが、脇役に至るまでどの登場人物もキャラ格が高く保たれており、どの子についても「いや、こいつマジで凄いんだぜ!?」と激賞できる点も美点です。


こんなものが存在するということが奇跡のような作品。
ソシャゲの原作をなぜか実写ミュージカル化、聖剣に選ばれし王候補が100万人もいるという初期状況からアーサー王同士が内輪もめしたり、諸侯や魔女やマーリンと戦ったりする。古橋秀之野梨原花南をあわせたような感じというとラノベクラスタにはお分かりいただけるであろうか。
各話が正味11分ちょいというごく短いなかで、きちんと話を進めつつ嘘次回予告やブリテン昔話をつっこんでくる超密度と、きわめてちゃんとしたミュージカルであるところが見所。無駄なことやってる余裕はないので描かれるものがいちいち的確で、とりわけ3話や12話は珠玉のごとき大傑作回になっとりますね。でも「魔法があればメンドクサクナイ」みたいなただただ与太でしかない歌も好き。


ガンダム。生意気だけど人好きのする少年パイロットが、へっぽこお姫様にくっついて地上から軌道エレベーターを上ってやがて月、金星まで旅をするけど立ち寄るところ全てで内輪もめしてる話。
ストーリーの牽引力が弱くてやや散漫なところはあるんですが、それと表裏一体で世界の広さが描かれています。
メカと宇宙と歴史と自然と文化と宗教と戦争と政治と恋と野心と失敗と日々のよろこびが、つまりもう世界のほとんどすべてがここにあるのです。あとメカが超クール。
なお並行して『ガンダムビルドファイターズトライ』も見てました。これも非常に面白かったです。


夏の魔法: ペンダーウィックの四姉妹 (Sunnyside Books)

夏の魔法: ペンダーウィックの四姉妹 (Sunnyside Books)

コテージを借りて夏休みを過ごすことになった4人姉妹が薄幸の美少年と4姉妹が遊んで遊んで遊びたおす話。
2005年の作品ですがフィリパ・ピアスアーサー・ランサムのような名作児童文学の風格があります。
装丁も含めてYAエンタメ的なポップさとは距離を置いたクラシカルな雰囲気ですが、一方でとにかくガキどもが遊びたおす話であり、また次女スカイとジェフリー少年の友誼も瑞々しく、たいへんおもしろ楽しい作品であります。


四人制姉妹百合物帳 (星海社文庫)

四人制姉妹百合物帳 (星海社文庫)

耳刈ネルリ拾遺』『四人制姉妹百合物帳』『アクマノツマ』の3作の同人誌の発表、『後宮楽園球場』のこのラノ5位(新作に限ると1位)、百合物帳の星海社からの出版と、石川博品の話題には事欠かない一年でした。現在は商業用のラノベを2作品手がけているそうです。
百合物帳も良いんですが一番はネルリの短編集ですかねー。「ちいさな耳刈ネルリ」や「双六ネルりの甘美なる敗北」のような何これ本編より本編じゃんって話も好きですし、わけわかんないにも関わらず工夫の効いてる「サンガ組が一着=八高外環路ムカデ競争 MUKADE!」も好きです。


なろうの書籍化はニンジャスレイヤーとこの世界がゲームだと俺だけが知っているがおもしろいと申し上げてきましたが、あらたに無職転生と辺境の老騎士がおすすめ作品に加わることになりました。

異世界転生もの。主人公は非常にハイスペックなんですが、そのぶん直面する状況を個人ではいかんともし難いくらい大きくしていて、大河ドラマとなってます。
ヒロインたちのキャラ萌え描写についても、いちいち時間軸方向にロングスパンな関係性から魅力を発生させているところが作品の特徴を生かしていていいですね。
辺境の老騎士 1

辺境の老騎士 1

引退した老騎士が行く先を定めない旅を続けながら、さまざまな人と出会い、揉め事を解決し、その土地のうまいものを食べて、やがて後の世の伝説にうたわれる存在となっていく、みたいな話。
流行りの異世界転生ものではなく、なろうや富士見FよりはCノベルスファンタジアの雰囲気、あるいは佐藤賢一やはたまたデュマの三銃士のような歴史活劇の趣のあるエピック・ファンタジーです。異世界ご飯の描写にめっちゃ力を入れてるのも特徴ですね。


マンガで印象に残ってるのは以下あたり。

ちょっと変わった人たちのちょっと変わった仕事風景、ふと立ち止まった時に見える景色、おしゃれになりきらない地元感あふるる都会生活、恋に発展するかもあやしいちょっとした出会い、つまりこの作者らしい作品です。大好き。
ちひろさん 1 (A.L.C.DX)

ちひろさん 1 (A.L.C.DX)

もと風俗嬢の美人さんが、浮世に生きる人たちのいろんな事情に時に寄り添い時に蹴っ飛ばしみたいな、お涙頂戴にはしないところまで含めてある種の面白さの典型なんですが非常に面白いです。こういうの読んですごく面白いとなんか悔しいですね!女子どもが3〜4人でぐだぐだしゃべっているのがちょう面白い系のマンガ。吉川さんは単眼系女子でジャンルNo.1にかわいいのではないか。


そのほかですと『僕のヒーローアカデミア』『だがしかし』『子供はわかってあげない』『七ツ屋志のぶの宝石匣』あたりでしょうか。


映画は『オール・ユー・ニード・イズ・キル』ですとか『ゴジラ』ですとか『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』ですとか『ベイマックス』ですとか、SF活劇をいろいろ見ましたけどどれも良かったです。


あとはNHKスペシャルの「少女たちの戦争〜197枚の学級絵日誌〜」が良かったです。
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2014/0814/
やたら絵心のある小学生たちが綴った絵日誌によってあざやかによみがえる70年前の子供たちの生活と、それを侵食していく戦争の影。名作でした。


継続して面白かったのは『魔術士オーフェン』ですとか『巡ル結魂者』ですとか『この世界がゲームだと俺だけが知っている』ですとか『RWBY』ですとか『ばらかもん』ですとか『まりかセヴン』ですとか『乱と灰色の世界』ですとか『風雲児たち』ですとかいろいろありますが、とくに大型エピソード「ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ」と並行してトゥーレイトとかサンダーボルトとかの傑作を連発していた『ニンジャスレイヤー』と、ラスボスが至高の負けっぷりを見せつけた『ハチワンダイバー』が印象に残ってます。あとおすすめされて『咲』を読み始めましたがこれもなるほど傑作でした。