読んでてオーフェンを連想する話を集めてみたにょ

共通点を軸にそれぞれの方向へと広がる作品世界が、対位法的に響きあって情報の価値がアップすんじゃ無いかなーとか思いまして。
書影はキャラがよくわかるのをチョイスしました。


でろでろ(14) (KCデラックス ヤングマガジン)

でろでろ(14) (KCデラックス ヤングマガジン)

  • 釣り目のヤンキー日野耳雄と妹の日野留渦が、町に巣食うやけに人間臭かったり社会風刺的だったりする霊や妖怪を、おもに耳雄の腕力で退治したりなんだりいろいろする話。
  • 目つきが悪くてむやみに乱暴な主人公を生かしている作品の仕組みが無謀編と共通。トトカンタにおける変態の代わりを、妖怪や幽霊が担当し、こいつらへのツッコミ役を主人公が勤めます。オーフェンが街の変態を熱衝撃波や空間爆砕で吹き飛ばすのと、耳雄が幽霊を素手で殴り飛ばすのとが対応しており、「空気を読まない変態に、さらに空気を読まない制裁が!」と言うよな斜め上系バトルロイヤルやご町内変人コメディのセオリーを表してますね。『エアマスター』とか『天体戦士サンレッド』(チンピラ主人公とあえてテンションを上げない日常感が無謀編の後半ぽい)みたいな。オーフェンも耳雄もわりとしょっちゅうひどい目にあうんですが、彼らも街の変態とおおまか同類の人間の屑である事が明記されてるので、とくに同情する気にもならないと言う点も一緒。
  • 女の子の可愛さはなかなかのもので、とくに釣り目の妹・日野留渦の可愛さはただ事で無いんですが、オーフェンファン的には耳雄の同級生・相原さんのお姉さんである相原水面も要チェック。筋金入りのくたびれ女子・やさぐれ女子・ヒステリー女子であり極めて萌え萌えです。


  • 略してBBB。人間と吸血鬼が暮らす街「特区」を舞台に、両種族の揉め事の調停員・葛城ミミコと護衛の吸血鬼・望月ジロー及びその弟コタローが、かつて香港で惨劇を引き起こした吸血鬼テロリスト集団「九龍の血統」と対決する!というよな内容。
  • 怒涛の展開と超絶アクション、くわえてシリアス本編・ギャグ短編の2方面展開と、富士見の王道の正統後継者ですね。特に6巻以降の盛り上がりは生半でない。
  • この作品、イラストの草河遊也が下駄を履かせてるんでしょうけど、オーフェンを思い出させる要素がちょこちょこあります。ヒロインが我侭でひねくれ者の姉貴分とフリーダムなブロンドと駄目っ子OLだったりとかね。話の大筋は、オーフェンVSチャイルドマン教室inトトカンタ、といった風で、かつての戦いで死んだ“父”を復活させるべく奮闘する敵方の義姉弟たちがたいへん仲睦まじく、主人公達がこいつらをあと一歩で捕り逃したりするとむしろほっとする始末です。


有頂天家族

有頂天家族

  • しかし、構成要素が似てるという事ならよりプッシュしたい作品がこっち。京都を舞台に人間・天狗・狸の3種族が三つ巴のてんやわんやする小説です。
  • まず人間・ドラゴン種族・地人の3種族に対応して、人間・天狗・狸の3種族が暮らしているという世界の基本的な設計が共通してます。また、偉大な父亡き後の家族の物語、という物語の骨組みも共通。鍋で食われた狸の父と、神通力を失って安アパートに逼塞している天狗の師匠が、オーフェンにおけるチャイルドマン先生に対応してます。
  • しかも登場する狸の兄弟ってのが、偉大な父の血を四つに分け、長兄が責任感を、次兄が暢気さを、三男が阿呆ぶりを、四男が純真さを受け継いだってんだからまんまチャイルドマン教室だ。さらに、主人公の初恋の女性にして父を鍋にして食った“金曜倶楽部”の一員、傍若無人に街を飛び回る黒髪のファムファタル・弁天がたいへんアザリーっぽい。
  • なにより、ドロップアウトしたインテリを筆頭にいろいろキャラの濃いのがうろうろしている賑やかな街、という絵がたまんないですね。オーフェンて作品もたいがい都市萌えFTで、トトカンタをはじめキャラの立った魅力的な都市や村落がたくさん出てきたけれど、街の描写は森見登美彦の描く京都のがさらに豊かです。なんせ実際に作者が住んでんですから。


  • 首吊り自殺にも失敗した引きこもりのヒデオと美少女コンピューターウイルス・ウィル子が、はったりと目つきの悪さを武器に、世界をかけた究極の無差別級バトルロイヤル「聖魔杯」に挑む!という話。
  • マスラヲもバトルロイヤル系の話で、はにわとか宇宙刑事とか悪の秘密組織とかたいがい変なもの同志で戦いあってる話ですね。加えて、話の終盤で主人公が世界の行く末を左右できるような莫大な力を任される、と言う展開がでてくる点でも似ています。『月と闇の戦記』(←主人公の設定がでろでろとかぶる。そしてイラストが草河遊也)や『ちょー』シリーズも同じ括り方のできる話ですね。
  • さらに、話の大筋が、身に余る過剰な力を持った繊細な“青年”のビルドゥングスロマンであるところが、オーフェンとマスラヲのいちばん似ているところです。結論としてどうなったかは別に同じじゃなくてもいいのです。ただ、こんなふうななんか黒っぽくて目つきの悪いネクラな青年がどんな風に生きたのかっていうその様が、同種の読み応えを与えてくれます。


  • 同種の過剰な力を持った青年のビルドゥングスロマンとしては『マルタ・サギーは探偵ですか?』も挙げたい。異世界群を股にかけたカードゲームに巻き込まれた主人公が、超強力な違法カード“ディテクティブ”を使って異世界で探偵稼業をやる、と言う話です。
  • 冒頭のマルタはいかにもある種のラノベっぽい拗ねた高校生なんですが、オーフェンでのキリランシェロ→オーフェンという少年期から青年期への移行が、マルタ・サギーでもやがて、よりがっつり描かれることになります。それに伴ってマルタの住む蓑崎とオスタスという2つの街のキャラ立ちもいや増し、ライバルにしてヒロインのドクトル・バーチとの関係も著しくラブ寄せされますのでお楽しみに。


エビアンワンダー 1 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

エビアンワンダー 1 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)

  • 悪人の魂を地獄のエネルギーに変える呪われた職業「銀符」であり、またくせっ毛ネコ系ファムファタル姉ちゃんでもあるフレデリカとその弟ハウリィの、はぐれ旅とその仕事を描いた旅FT。
  • アザリーと似てる姉弟としては萩尾望都版『恐るべき子どもたち』なんかも挙げられると思いますが、そっちの作品では姉のエリザベートが本当に余計な事しかしなくて最後悲惨な結果になるんですが、『エビアンワンダー』のフレデリカはそうはなりません。アザリー×キリランシェロのトゥルーエンドとして読む事のできる作品といえます。
  • おがきちかという作家は、作中の主要登場人物全員から愛されているヒロインを描ける希有な人で、下手にそんなことすると読者が冷めちゃうからすごい技だと思うんですけど、そういう作家だからこそアザリー系の度し難い女子を救うことができた、というかおがきちかみたいな作家を引っ張って来でもしない限りアザリーは救えなかったのだなあとたいへん感慨深いです。ラストは涙無しには読めません。


以上、挙げた作品みなオススメ、そもそも単体で面白い秀作・傑作ぞろいなので気が向いたら読んでみるがいいです。