ラノベの定義論についてまとまりなく(改訂版)

なんだかまたぞろ定義論を楽しんでいる人がいるようなので人類の未来のために書きます。

その1

ラノベってなにかっていったら、ラノベが目指してる方向についてから言えば主にティーン向けとして書かれた、客層の近いマンガやアニメに近い読書感覚をつくるためにイラストレーションの活用や読解ストレスの軽減、盛り上げどこでの感情の加速などにいろいろ工夫がなされてる小説のことであろうと思っております。
また、出自からいえば若者&オタ向けのエンタメとYA文学が似たようなパッケージングの中に合流してなんじゃらもんじゃらしながらジャンルの歴史を積み上げていまはとくに萌コメが流行ってるよね、くらいのもんであろうと思います。
歴史については、ちょっと前にmizunotoriさんにまとめてもらったのがあったりしますね。
hatikadukiさんによる『ライトノベル史』 - Togetter hatikadukiさんによる『ライトノベル史』 - Togetter

その2

さて。
個別の作品がラノベかどうかの判定って、作品の要素で役をつくってそれを審査するような感じだと思うんですよね。つまり以下。


[講談社BOX] + [小説] + [百合]

ぐいぐいジョーはもういない (講談社BOX)

ぐいぐいジョーはもういない (講談社BOX)

講談社BOXはボーダーな位置にあるレーベルですよね。文庫レーベルじゃないものは基本的にはラノベじゃないと判断する人もある程度いると思います。僕としちゃレーベルごとラノベ判定でいいじゃんと思うんですが、しかし次のようなものも。


[講談社BOX] + [マンガ]

フリクリ (上) (講談社BOX)

フリクリ (上) (講談社BOX)

これはかなり厳しい!小説じゃないものをラノベと呼ぶのは僕でもかなり躊躇します。絶対ちがうとは言いませんが。逆に次のような場合なら。


[講談社BOX] + [小説] + [女の子いっぱい] + [西尾維新] + [アニメ化]

化物語(上) (講談社BOX)

化物語(上) (講談社BOX)

パターン青ってかんじですねー。化物語クラスであれば、レーベル原理主義の人以外の方からはラノベ判定いただけるものと思います。

その3

ええと。
最近のこのエントリでも図にされている通り、ラノベには狭いコアと広いフィールドの2重構造があると思います。
ライトノベルの定義について - TRPGのススメ? ライトノベルの定義について - TRPGのススメ?



次の表ではもうひとつ中間層を挟んでみました。ラノベだと思う人もいるのが黄色、ラノベに明るい人であればたいがいラノベだと思っているのが中間のオレンジ、ラノベオタはみんなラノベだと思ってるし外野からもラノベだとすぐに理解されるのがコアの赤い部分です。さっきの役の話で言うと、極めて多くの人がこの役は成立すると判定する作品が赤色部分になります。


んで、このコアの部分は時代ごとのトレンドによって微妙にぶれ動いてきました。これを強調かつ簡略化してみたのが次の図です。
簡略化するにしてもやりすぎだし、本来は裏切っちゃいけないところも裏切ってる図なんですが、そこはわかりやすさを優先しました。だから石を投げないでください。


しかしながら、作品の内容における現在のトレンドにのみもとづいて、ラノベかどうかが判定されラノベのコアが出現しているのかといえば、必ずしもそうとは言えないのではないでしょうか。
ある種のハチャメチャさや、ある種のめんどくささ等といったイメージは、現在流行りの作品からよりも、かつてあったラノベの一時代における好評および悪評、そしてその遺伝子を受け継ぐ現代の後継作品によってもたらされているのではないだろうか、と思うのですね。
図にしてみると以下。


しかもここに、レーベルという要素が加わります。
主要ラノベレーベルから出ているかどうかで切り分けるというラノベの定義方法は、作品の内容と一切関係ないものですから、他の判定基準とは質的に異なるものであるといえますし、またそれのみに拠ってラノベかどうかを判断するとしたらそれは乱暴すぎるとは思います。
とはいえ、主要ラノベレーベルがラノベというジャンルを切り開き作り上げてきたことを考えれば、ラノベレーベルから出版されているものがラノベであり、それ以外のレーベルから出版されるならその時点でラノベではないという考えかたにも一定の妥当性を認めざるを得ません。
まァ、排他的にではなくいくつかのものさしをあわせて使用していきたいなと思うわけですが、しかしレーベルによる定義方法を先ほどの図にかぶせると以下のようになります。これは電撃文庫の場合ですが。

当該レーベルから出ているかどうかは作品の内容とはかかわりませんのでオレンジの枠内に広く覆いかぶさるようになります。


まとめると3つです。
1 狭いコアと広いフィールドの二重構造
2 現在のトレンドとは別に点在するラノベイメージの定型
3 内容面からの定義づけとは質的に異なるが一定の歴史的な重みを持つ出版レーベルに拠ったラノベ定義の存在
こーいう経緯でラノベってものがよくわからなくなるんじゃないでしょうか。


かようにラノベの定義は複雑であり、すれ違いや揉め事のもとにもなります。
けれどその一方で複雑だからこそ、ラノベが特定の狭いラノベらしさに縛られる事から危ういところで免れ、だからこそ未だにラノベに新しい血と新しいドリームを感じられるのではないかしらん、とか思ったりもするわけですねー。
以上ヨタでした。ぐわー、図を作るのがすげえめんどかったっす。