アラサーのおすすめする最近のライトノベルたち

アラサーと言うかジャスト30歳なんすけどね。
好きラノ2015年上期(http://lightnovel.jp/best/2015_01-06/)への投票用エントリなんですが、世代を把握した上で以下ずらずら並べる作品群を眺めていただくと、見えてくるものもなんか違うかなと思います。特に、ここ最近はラノベとはすっかりご無沙汰になってしまって、再入門しようと思ってラノベ売り場をのぞいても目が滑るばかり、みたいな人に参考にしてもらえたら嬉しいです。
なお自分がラノベに入門したのは富士見と電撃の王朝交代期あたり、富士見ファンタジアの黄金期を支えたヒット作たちの活躍とファンタジー作品群の豊穣の一方で、伸び盛りの電撃文庫や徳間デュアルから次々に斬新でカッコイイ作品が登場してきていた時期。
殿堂入り級に好きなラノベ十二国記デルフィニア戦記・グラスハート・魔術士オーフェン・ケイオスヘキサ・暗闇にヤギを探して耳刈ネルリ・ニンジャスレイヤーあたりです。


今回の「好きラノ」はアルデラミンが奪るんじゃないかな!
昼行灯な名将が大活躍する銀英伝みたいなジャンルの作品。主人公は怠惰さの中に暗い激情を秘めていてもうちょっと若さがありますが。
海戦・撤退戦・山岳戦・脱出行と手を変え品を変えいろんな戦争を描いてきた本作ですが、最新7巻は6巻から引き続きグダグダの内乱が舞台、終盤の展開が心をえぐり、心情描写が胸をつきます。ヒロインのヤトリシノ嬢はこのラノのキャラクター人気投票でもいいとこまでいくのではないでしょうか。
【15上期ラノベ投票/9784048693363】



のうりん 10 (GA文庫)

のうりん 10 (GA文庫)

もやしもんみたいなお勉強系の作品です。舞台も農業高校ですしね。ラノベでお勉強系の作品ってほとんど見かけないんですが、にも関わらずこの作品は他ジャンルにおける古今の名作と比べてもまったく見劣りしない高みにあります。
ギャグばっかりで出来てる作品なんですが、ちょっと専門的な話をするときは四天農と呼ばれる優秀な生徒がガイド役として登場して急に少年マンガのノリになったり、農業の未来を憂うときは富野アニメネタが中心になったりと、農業ネタとマンガやアニメのパロディの絡ませ方に計算された上手さがあります。
【15上期ラノベ投票/9784797382921】



スレイヤーズの昔からソードアートオンラインの現代まで、RPG異世界ラノベの王道ですよね。ログ・ホライズンはある日突然ゲームの世界に入っちゃった系の話なんですが、そうしたジャンルの中でも“ゲーム世界に閉じ込められたプレーヤーは数十万人にも及んだ…”というところに特徴のある、かしこ系な作品です。設定とドラマの盛り上がりの絡ませ方がうまいのも美点ですね。
最新9巻はニンジャタートルズに憧れる米国籍の青年が主人公のわりと外伝的な話、ソードアートオンラインやニンジャスレイヤーみたいなアクション重点回で、他の巻とは結構毛色が違うんですがこれがメチャクチャおもしろかったです。
【15上期ラノベ投票/9784047301900】



ニンジャスレイヤー 秘密結社アマクダリ・セクト (不滅のニンジャソウル # 1)

ニンジャスレイヤー 秘密結社アマクダリ・セクト (不滅のニンジャソウル # 1)

B.ボンドとP.N.モーゼズのふたりの才人がおくる話題のサイバーパンクニンジャ活劇、twitterにて連載中。古橋秀之秋山瑞人が龍盤七朝の続きを書かなくても俺には忍殺があるからいいんだ…。
作品の内容は攻殻機動隊北斗の拳と今川版Gロボと封神演義をぶっこんでニンジャでまとめた感じです。平成ライダーシリーズやTIGER&BUNNYみたいな装甲ヒーローものとしての味わいもあり男性・女性両方にお勧めです。
いや実際、ジョジョガラスの仮面並みのウルトラ大傑作大長編なのでとりあえず公式アカウント(https://twitter.com/NJSLYR)をフォローしてみるといいのでは?
【15上期ラノベ投票/9784047304185】



巡ル結魂者5 (講談社ラノベ文庫)

巡ル結魂者5 (講談社ラノベ文庫)

魔術士オーフェン血界戦線のノベライズなんかで知られる秋田禎信異世界召喚女の子いっぱいファンタジー
秋田禎信の手による女の子いっぱいFTとしてファンにとっても理想的な作品として仕上がっており、頭の回転が早くて自立心のある女子どもがわんさか出てきます。
なんというか、最初はニセコイなのかなと思ってたらアッこれワールドトリガーや!ってなる感じ。召喚されたらまわりが那須隊とかチカちゃんとか小南先輩とかオペレーター勢とかそんなんばっかなわけです。
主人公がハイスペックなあたり極黒のブリュンヒルデっぽくもありますねー。多彩な魔法描写も魅力です。
【15上期ラノベ投票/9784063814583】



明日の狩りの詞の (星海社FICTIONS)

明日の狩りの詞の (星海社FICTIONS)

地球に住み着いた宇宙生物をハントして食う、青春狩猟SF。
発表時期的にダンジョン飯にたとえて紹介されてることが多かった印象ですけど、どっちかっていうと山賊ダイアリーが途中からコッペリオンになるって感じ。もしくは椎名誠っぽい。
石川博品ラノベ作家としては珍しく、コンセプトの違う単巻作品を次々発表している作家で、そのへん古橋秀之に近いですかね。次回作の情報が出るたびに、発売前からその世界観や作家のフィルモグラフィーのなかでの位置づけを検討するファンの姿が見られ、発表後は感想まとめや元ネタ考察記事なんかがはてブに上がってくるので愛されてるなーと思います。
本作は石川博品作品の作品群の中でも入門編としてとくにおすすめできるものだと思いますね。
【15上期ラノベ投票/9784061399174】



辺境警備デルフィニア戦記を足して2で割ったような作品で、面白さ的にもそんな感じです。この説明は猛烈に褒めてますよ。
引退して旅に出た老騎士が訪れる先々で出会う大国を揺るがす陰謀や誇り高き蛮族との揉め事や武技の競技会といったわりとベタベタな出来事を力強く描き、それをその地方ごとの名物料理たちが彩ります。
ジジイ無双とメシのうまそさはファンタジー剣客商売とも言えますでしょうか。
華やかな活劇もとても面白いですが、それと同時に食事に集約されている今この瞬間の生きる喜びや、あるいは物語の伝承や歌といった時を越える文化の輝きが、それぞれに違った時間の流れの中にある価値として作品を構成しているところに良さがありますね。
あと3巻のイラストが絶品でした。これは見もの!
【15上期ラノベ投票/9784047304710】



コップクラフト (5) (ガガガ文庫)

コップクラフト (5) (ガガガ文庫)

異世界と地球の接点となった都市を舞台とした、敏腕刑事と女騎士のバディによる刑事ドラマ。マイアミ・バイスみたいな海外ドラマを明確に意識した作風で、アワーズとかサンデーGXとかウルジャンに載ってそう。
もともと竹書房ゼータ文庫から刊行されててその時のイラストは篠房六郎だったんですが、レーベル消失にともないガガガ文庫から再刊されイラストは村田蓮爾に交代になりました。旧2巻のイラストとかすごい良かったんですけどね。
でまあ、旧版が好きだったので長らく釈然としない思いを抱えていたのですが最新5巻がかなり良かったので、ようやく死んだ子の歳を数えるのをやめて現シリーズにきちんと向き合う気がでてきました。次巻も楽しみです。
【15上期ラノベ投票/9784094515442】



石川博品2作品目。イスラム異世界後宮で宮女たちがみんなして野球をしてるという謎めいたコンセプトの作品。ハルタとかに載ってそう。
一度打ち切りを食らったそうなんですが、このラノの新作部門で1位、全体でも5位となったために続刊が刊行されることになりました。よかったよかった。
野球小ネタをこれでもかとぶち込んだ素軽い文章の中に、ときおり野球場の空気や距離をもありありと感じさせる試合の光景の描写や、記憶に滑り込む後宮での日々におけるちょっとしたエピソードが挿入されて、作品世界の存在感を確固たるものにしています。これぞ石川博品って感じですね。
【15上期ラノベ投票/9784086310543】



ゲームの世界に召喚される手の作品って、召喚された上で何をするかってのでいくつかスタイルが分かれていきますが、この作品は典型的な魔王プレー。配下のゆかいな魔人たちとともに、異世界に生きる住人たちのキラキラした生命の輝きを蹂躙する暗い爽快感が売りです。
ゲーム世界に召喚される系の作品は徐々にプレーヤーとNPCの垣根が消えていくものですが、この作品ほどハナっからNPCこそが人間であり主人公は既に死者であることが明白な作品も珍しい気がします。
【15上期ラノベ投票/9784047304734】



翼の帰る処 5 ―蒼穹の果てへ― 上

翼の帰る処 5 ―蒼穹の果てへ― 上

10枠に入りきらず惜しくも次点。
辺境に飛ばされてきた隠居希望で苦労性の超有能虚弱青年官僚が、帝国の若い皇女に仕えて地元の揉め事やら帝国の内紛やら神話の時代の魔物への対策やらに奔走してはぶっ倒れてもふもふの鳥たちに癒されるファンタジー小説です。
文系ハイスペックが田舎にやって来るって構図は、ばらかもんとかそのへんの作品とも面白さの構造が共通してると言えますね。
最近は皇女が主人公に対して本気になってきておりヒヤヒヤもの…というかそういうの踏み越えてるな。ヤエトお前そんな草食系ですよって顔してそんな一面をどこに隠してたんだ。


そのほか

あたりも面白く読んでます。


それから投票期間内に新刊が出なかったけどおすすめなのがこれ。

この世界がゲームだと俺だけが知っている 6

この世界がゲームだと俺だけが知っている 6

ゲームの世界に入り込んでしまった主人公だったが、そのゲームはよりによって伝説的クソゲーとして知られるニュー・コミュニケート・オンライン、通称猫耳猫だったのだ!という話。
ゲーム的ファンタジーのあるあるをギャグにしながら続く破天荒な冒険は、かつてのフォーチュン・クエスト極道くん漫遊記スレイヤーズ(の特に短編集)と同じノリであります。
また、猫耳猫の世界は悪意しか感じられないようなイベントや度肝を抜かれるバグに彩られていますが、ひとたび現実として存在してしまえばそれもまた異世界における自然の神秘であり、異邦人とマタギの特性を兼ね備える主人公ソーマを案内人とした猫耳猫世界をめぐる旅には、地球イチバンとかワンダー×ワンダーのようなNHKのドキュメンタリーのような面白さを覚えますね。

ニンジャスレイヤーのアニメがはじまるので原作未読なら覚えとくとちょっといいと思うポイント

ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上 (1)

ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上 (1)

ニンジャスレイヤー 秘密結社アマクダリ・セクト (不滅のニンジャソウル # 1)

ニンジャスレイヤー 秘密結社アマクダリ・セクト (不滅のニンジャソウル # 1)

ニンジャスレイヤーは現在第三部が絶賛連載中でして、第一〜第三部ではジョジョの奇妙な冒険ほどではありませんがカラーに違いがあります。
今回アニメ化されるのは第一部ネオサイタマ炎上編、ニンジャスレイヤーと言うダークヒーローの復讐の戦いに焦点を絞った渋くてカッコいい話です。
多くの敵味方が入り乱れる第二部キョート殺伐都市編や、大河ドラマ的な広がりを見せる第三部不滅のニンジャソウル編と比較してよりシンプルで力強いパートでありますが、そのぶん舞台背景となる設定なんかはサラっとしか触れられないことも多いんですよね。
そのような第一部ではチラっと名前が出てくるだけの設定のなかでも、これは押さえておいたほうがより楽しめるんじゃないかなと自分としては思ってるポイントがありまして、なにかってーとY2K電子戦争です。


ニンジャスレイヤーの世界の近現代史は1999年までは現実の世界とほぼ同じなんですが(ただし古代・中世史はまるっきり違う)、2000年を境に大きく歪むことになります。
んでその発端がY2K2000年問題なのです。
覚えてますかY2K。なんかコンピューターがバグるからヤバいとかいうやつ。とくに何も起こらなかったY2K


ニンジャスレイヤーの世界ではY2Kによって全世界のコンピューターが連鎖爆発し、これによって多くのエンジニアも命を落としたためにコンピューター関係の技術が著しく後退もしくはブラックボックス化しました。近未来都市ネオサイタマの情報技術の基幹をなしているのはIRCであり、ハッカーたちは互いのタイピング速度を競いあっています。


Y2Kとそれに続いたIPアドレス枯渇問題が引き起こしたのが電子戦争でした。この詳細不明ながら多くの国家と大企業を巻き込んだらしい戦争を経た結果、
1 磁気嵐と殺人マグロにより海外からの渡航が著しく限定された日本の鎖国
東京湾を埋め立てた巨大都市ネオサイタマの成立とキョート共和国の独立による日本国という枠組みの後退
3 暗黒メガコーポと呼ばれる大企業群の支配力の伸長
4 戦争を通じたサイバネティクス技術の飛躍的な発展
という出来事が起こりました。


また、ニンジャスレイヤー第一部のスタート時点で電子戦争の終結から10年経っていないらしく、ニンジャスレイヤーが描いているのは戦後のネオサイタマ社会なんですよね。
電子戦争の終結により戦争に投じられていた技術と人とエネルギーがネオサイタマへと流入、それによってもたらされたのが、
1 戦闘義肢や脳へのLAN直結といったサイバネティクス技術の民間への拡散
2 様々な違法ドラッグの蔓延
3 ヤクザの台頭
でした。ネオサイタマの治安がメチャメチャ悪いのにもきちんと理由があるのです。


これらに加え瀕死の人間が人知を超えた力を備えて復活するニンジャソウル憑依現象もまた、何故かY2Kを境として加速度的な増加を始めたと言われています。Y2Kに実際何が起きたのかはいまだ明らかになっておらず、これはあるいは第3部のクライマックスと関係してくるのかもしれません。


以上のようなネオサイタマの時代背景を前提とした上で、ネオサイタマ暗黒社会を勝ち抜きついに制覇するに至ったのがラオモト・カン率いるニンジャヤクザ組織ソウカイ・シンジケート、通称ソウカイヤです。
ソウカイヤの誇る威力部門“シックスゲイツ”には戦争の影を感じさせるニンジャが散見される他、初期に登場する主要なシックスゲイツのニンジャは戦闘部隊としての印象が強い一方で中盤になると中間管理職的な組織人としての傾向が強まるなど時期による色調の違いがあり、シックスゲイツのたどった組織の歴史は第一部の裏の主要プロットとなっていると思います。


こんなところでしょうか。そのほかユカノ株を買うときは長期的な視点が必要とかも気に留めておくといいかもしれませんが、あまり突っ込んだことを言うと過度のネタバレになるのでこれ以上はやめておきましょう。
4月16日(木)の配信開始が楽しみですね!ではでは。


関連:悪党!悪党!悪党!/ニンジャスレイヤーの敵キャラを語る

2014年の面白かったもの

14年の新作ではありませんがとりあえず『アイカツ!』は挙げておきます。

劇場版アイカツ! 豪華版 [Blu-ray]

劇場版アイカツ! 豪華版 [Blu-ray]

今が流行りのアイドルアニメの一つ。アイカツのイッキ見はこれまでの我が人生でもとくに価値のある行為だったと思います。
児童文学的な教導的性格とギミックに頼らない堅実な作劇の一方で、斧に象徴されるやりすぎ感・どうかしてる感と異質なライブパートの挿入による気分の高揚があり、そして基本一話完結かつライブパートに尺を取られるが故に登場人物が悩んでもドラマまでそれに付き合うことなくテキパキ問題を片付けていくサクサク進行が魅力的だし、個人的に非常に肌に合いました。女児どもがみんな楽しそうに日々頑張っており、良いです。
キャラ格の上げ下げが物語と密接する少年マンガ的な側面も持っているのですが、脇役に至るまでどの登場人物もキャラ格が高く保たれており、どの子についても「いや、こいつマジで凄いんだぜ!?」と激賞できる点も美点です。


こんなものが存在するということが奇跡のような作品。
ソシャゲの原作をなぜか実写ミュージカル化、聖剣に選ばれし王候補が100万人もいるという初期状況からアーサー王同士が内輪もめしたり、諸侯や魔女やマーリンと戦ったりする。古橋秀之野梨原花南をあわせたような感じというとラノベクラスタにはお分かりいただけるであろうか。
各話が正味11分ちょいというごく短いなかで、きちんと話を進めつつ嘘次回予告やブリテン昔話をつっこんでくる超密度と、きわめてちゃんとしたミュージカルであるところが見所。無駄なことやってる余裕はないので描かれるものがいちいち的確で、とりわけ3話や12話は珠玉のごとき大傑作回になっとりますね。でも「魔法があればメンドクサクナイ」みたいなただただ与太でしかない歌も好き。


ガンダム。生意気だけど人好きのする少年パイロットが、へっぽこお姫様にくっついて地上から軌道エレベーターを上ってやがて月、金星まで旅をするけど立ち寄るところ全てで内輪もめしてる話。
ストーリーの牽引力が弱くてやや散漫なところはあるんですが、それと表裏一体で世界の広さが描かれています。
メカと宇宙と歴史と自然と文化と宗教と戦争と政治と恋と野心と失敗と日々のよろこびが、つまりもう世界のほとんどすべてがここにあるのです。あとメカが超クール。
なお並行して『ガンダムビルドファイターズトライ』も見てました。これも非常に面白かったです。


夏の魔法: ペンダーウィックの四姉妹 (Sunnyside Books)

夏の魔法: ペンダーウィックの四姉妹 (Sunnyside Books)

コテージを借りて夏休みを過ごすことになった4人姉妹が薄幸の美少年と4姉妹が遊んで遊んで遊びたおす話。
2005年の作品ですがフィリパ・ピアスアーサー・ランサムのような名作児童文学の風格があります。
装丁も含めてYAエンタメ的なポップさとは距離を置いたクラシカルな雰囲気ですが、一方でとにかくガキどもが遊びたおす話であり、また次女スカイとジェフリー少年の友誼も瑞々しく、たいへんおもしろ楽しい作品であります。


四人制姉妹百合物帳 (星海社文庫)

四人制姉妹百合物帳 (星海社文庫)

耳刈ネルリ拾遺』『四人制姉妹百合物帳』『アクマノツマ』の3作の同人誌の発表、『後宮楽園球場』のこのラノ5位(新作に限ると1位)、百合物帳の星海社からの出版と、石川博品の話題には事欠かない一年でした。現在は商業用のラノベを2作品手がけているそうです。
百合物帳も良いんですが一番はネルリの短編集ですかねー。「ちいさな耳刈ネルリ」や「双六ネルりの甘美なる敗北」のような何これ本編より本編じゃんって話も好きですし、わけわかんないにも関わらず工夫の効いてる「サンガ組が一着=八高外環路ムカデ競争 MUKADE!」も好きです。


なろうの書籍化はニンジャスレイヤーとこの世界がゲームだと俺だけが知っているがおもしろいと申し上げてきましたが、あらたに無職転生と辺境の老騎士がおすすめ作品に加わることになりました。

異世界転生もの。主人公は非常にハイスペックなんですが、そのぶん直面する状況を個人ではいかんともし難いくらい大きくしていて、大河ドラマとなってます。
ヒロインたちのキャラ萌え描写についても、いちいち時間軸方向にロングスパンな関係性から魅力を発生させているところが作品の特徴を生かしていていいですね。
辺境の老騎士 1

辺境の老騎士 1

引退した老騎士が行く先を定めない旅を続けながら、さまざまな人と出会い、揉め事を解決し、その土地のうまいものを食べて、やがて後の世の伝説にうたわれる存在となっていく、みたいな話。
流行りの異世界転生ものではなく、なろうや富士見FよりはCノベルスファンタジアの雰囲気、あるいは佐藤賢一やはたまたデュマの三銃士のような歴史活劇の趣のあるエピック・ファンタジーです。異世界ご飯の描写にめっちゃ力を入れてるのも特徴ですね。


マンガで印象に残ってるのは以下あたり。

ちょっと変わった人たちのちょっと変わった仕事風景、ふと立ち止まった時に見える景色、おしゃれになりきらない地元感あふるる都会生活、恋に発展するかもあやしいちょっとした出会い、つまりこの作者らしい作品です。大好き。
ちひろさん 1 (A.L.C.DX)

ちひろさん 1 (A.L.C.DX)

もと風俗嬢の美人さんが、浮世に生きる人たちのいろんな事情に時に寄り添い時に蹴っ飛ばしみたいな、お涙頂戴にはしないところまで含めてある種の面白さの典型なんですが非常に面白いです。こういうの読んですごく面白いとなんか悔しいですね!女子どもが3〜4人でぐだぐだしゃべっているのがちょう面白い系のマンガ。吉川さんは単眼系女子でジャンルNo.1にかわいいのではないか。


そのほかですと『僕のヒーローアカデミア』『だがしかし』『子供はわかってあげない』『七ツ屋志のぶの宝石匣』あたりでしょうか。


映画は『オール・ユー・ニード・イズ・キル』ですとか『ゴジラ』ですとか『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』ですとか『ベイマックス』ですとか、SF活劇をいろいろ見ましたけどどれも良かったです。


あとはNHKスペシャルの「少女たちの戦争〜197枚の学級絵日誌〜」が良かったです。
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2014/0814/
やたら絵心のある小学生たちが綴った絵日誌によってあざやかによみがえる70年前の子供たちの生活と、それを侵食していく戦争の影。名作でした。


継続して面白かったのは『魔術士オーフェン』ですとか『巡ル結魂者』ですとか『この世界がゲームだと俺だけが知っている』ですとか『RWBY』ですとか『ばらかもん』ですとか『まりかセヴン』ですとか『乱と灰色の世界』ですとか『風雲児たち』ですとかいろいろありますが、とくに大型エピソード「ロンゲスト・デイ・オブ・アマクダリ」と並行してトゥーレイトとかサンダーボルトとかの傑作を連発していた『ニンジャスレイヤー』と、ラスボスが至高の負けっぷりを見せつけた『ハチワンダイバー』が印象に残ってます。あとおすすめされて『咲』を読み始めましたがこれもなるほど傑作でした。

不完全な世界の完全なシステム、そして王のUTSUWA/実ミリとガチャクラとアイカツと忍殺とオーフェンとログホラを比較してみる

発表時期が近くて構造が似てる作品を表にまとめてみた。発表年(書籍の発売年)順。ついでにARMSとエヴァウォッチメンも表に当てはめてみた。

  実在性ミリオンアーサー ガッチャマンクラウズ アイカツ! ニンジャスレイヤー 魔術士オーフェン原大陸編 ログ・ホライズン ARMS 新世紀エヴァンゲリオン ウォッチメン
都市 キャメロット 立川市 スターライト学園 ネオサイタマ ラポワント市 アキバ ニューヨーク 第三新東京市 ニューヨーク
拡散したもの アーサー ハンドレッド アイドル ニンジャ 魔術士 冒険者 キースシリーズ    
聖剣 エクスカリバー NOTE おしゃもじ&マイク グンバイ オーロラサークル   ARMS エヴァンゲリオン コスチューム
宰相、システムの管理者 マーリン 爾乃美家累 光石織姫 アガメムノン オーフェン シロエ キース・ブラック 碇ゲンドウ オジマンディアス
擬人化したシステム ニムエ 総裁X   アルゴス マルカジット   黒いアリス MAGI&赤木リツコ  
若王 剣サー、技ーサー、魔ーサー 一ノ瀬はじめほか 星宮いちごほか   マヨール、ヴィクトール、ラチェット ログホラ年少組 高槻涼 碇シンジ 2代目ナイトオウル
幼王 コンスタンティン     ラオモト・チバ     赤木カツミ    
騎士 ランスロット   ジョニー別府 ネヴァーモア イシリーン&エッジ 直継   葛城ミサト  
先王 ウーサー   神崎美月 ラオモト・カン チャイルドマン     碇ユイ コメディアン
幕臣     スターライト学園教師陣 アクシスの十二人 魔術学校&戦術騎士団 円卓会議   NERV  
諸侯 11人の支配者 立川市長ほか トップデザイナー 暗黒メガコーポ サルア市長ほか 大地人諸侯      
魔女、もうひとつのシステム モルゴース ベルク・カッツェ 夢咲ティアラ ドラゴン・ゲンドーソー、ロード・オブ・ザイバツ カーロッタ・マウセン 濡羽 キース・ブルー キール・ローレンツ  
魔女の末娘 モルガン   音城セイラ ドラゴン・ユカノ     白いアリス&久留間恵 渚カヲル 2代目シルクスペクター
暗殺者、王国の審判役 モードレッド ベルク・カッツェ(スカーフ) 涼川直人 ニンジャスレイヤー ベイジット・パッキンガム ブリガンティア組 新宮隼人 加地リョウジ ロールシャッハ
暴徒の王 リエンス王 梅田さん 三ノ輪ヒカリ デスドレイン ボニー・マギー ウィリアム・マサチューセッツ     モーロック
探索者       ダークニンジャ   カナミ 高槻巌    
音楽担当 ほぼ全員   ほぼ全員 DJタニグチ父子   五十鈴      
先住民 妖精 宇宙人   リアルニンジャ ドラゴン種族 古代種      
超越者/来訪者   J・J・ロビンソン   カツ・ワンソー/ザ・ヴァーティゴ 神人/魔王 典災/航海種 アザゼル 使徒/アダム&リリス Dr.マンハッタン
発端 第一次〜第三次戴冠作戦   マスカレードの活躍 Y2K アイルマンカー結界の消失 大災害 アザゼルとアリスの融合 セカンドインパクト キーン条例の制定
戦争相手 外敵     キョート共和国 革命闘士/リベレーター ゴブリン   使徒 ソ連


・なにかしらの力の拡散・流出が起きている。拡散した力は一概に劣化品とは言えないものの、本来あった唯一性は損なわれてしまっている。ミリオン化。


・社会を運営し人びとの生存を支えていくためには優れたシステムが必要なんだけど、システムは本質的に非人間的なものなのでいずれどこかで無理が出てひとを殺すことになる。それをやむおえない犠牲と割り切って善意でもってシステムによる支配を推し進めるのがシステムの管理者である宰相。


・宰相のそばにはシステムの一部が人格を持って具現化した存在が控えていることが多い。


・夢と可能性をもった若き王。システムがひとを犠牲にすることを否定するが、システムが必要なこと自体は自明であるため、その理想の及ぶ範囲は存在は限定的・例外的なものにとどまらざるを得ない。逆に言えば理想を奉じてどこまでゆけるか、どれだけの人々・物事を背負えるかという射程範囲がすなわち王のUTSUWA。


・王のUTSUWAの範囲を決めるのが暗殺者=王国の審判役。王国の審判役の存在は王の将来における限界を証明するとともに、逆説的に今現在の王の正しさを保証するもの。


・いずれ必ず人を殺すシステムを用いながら完全性を求める宰相はいずれ必ず人を殺すし、人を殺さないためには完全性を捨てて限界を受け入れなければならない。アーサーの王国はいつか必ず滅ぶ。


・宰相も若王も体制側の陣営を同じくする人間であるが、若王はいずれ宰相と対決する必要がある。


・若王は宰相に反抗してゆくことになるが、幼王は宰相の秘蔵っ子であり、宰相の計画の鍵である。


・王の証が聖剣。


・若王・幼王ともに今で未熟であるためとくに戦闘力面でのサポートを行う騎士が側に付く。


・先王と諸侯(と宰相)は若き王との対比としての大人世代であり、乗り越えるべき障害として立ちふさがる。ロングスパンの物語だと彼らはかつての主人公たちだったりする。


・未熟かつ限定的な存在である若王に対する存在として、先王はひとりで万能な存在として描かれるが、しかしひとりで全てを背負うことは不可能であり先王の治世はどこかで破綻している。すでに故人であることも多い。


・諸侯は一定の支配領域を持つ地元の有力者で、実力はあるがちょっと考え方が古い。こいつらに認められることが若王の当面の目標になる。


・若王が複数存在する場合もあるが、その場合もその中での首位となる人物は存在する。


・システムの管理者である宰相への対抗者として、代替システムの管理者である魔女が存在する。もともと宰相が状況に応じて味方になったり敵になったりする存在なので、魔女もまた状況に応じて敵になったり味方になったりする。宰相のシステムが現在の世界を基本的に支配しており、魔女の管理するシステムは代替的・副次的なものに留まる。かつて宰相と争って負けてたりとかする。魔女の勢力にも秘蔵っ子はおり強大な力を持つがこれも敵になったり味方になったり。


・暗殺者は魔女の勢力によって生み出され、宰相および若王の所属する体制側のシステムに潜り込んだ存在。しかし独自の意思を持って動くようになり、自分自身で認めた王である若王を支持、また若王が道を誤った時にそれを正す役割につくことに。


・暗殺者は宰相と魔女の両方のシステムを裏切っているので孤独な存在と言える。


・暗殺者は仮面ライダー型のヒーローの変形である。またブギーポップのような世界の機能の一部としてのヒーローであるとも言える。


・基本的に完全な悪役のいない話、それぞれの正義のある話であり、そのぶん正義を奉じない人々、悪漢・パンクス・アナーキストなんかの受け皿として暴徒の王が存在する。そりゃ土地の豪族である11人の支配者からすればリエンスは受け入れられんよ。


・システムは超常の技術が根幹にあるのでそれをもたらした超越者や先住種族が存在することになるし、またそうした世界の謎を探求する人物が配置されることもある。


・ある種の閉鎖世界SFであることも多く、であるがゆえに世界を渡りあるく存在が登場することも多い。


・都市が舞台であり、背景で戦争をしていることが多く、音楽家が重要な地位を占めることもある。


・以上がミリオンアーサーの構造になるんだけど、ミリアサの整理のされっぷりって半端ないので同系統の作品にもこの構造を適用していくことができる。
 おそらくまず力の拡散と宰相、それに若王と暗殺者あたりが重要であり、他のポジションはそれらとの対比で自然と定まってくるものなんだと思う。


・ガチャクラは宰相と魔女が同じシステムとそれに関わる人間たちへの解釈を巡って綱引きをする話だけど、ほかの作品と比べると最少の力がかなり弱く、若王と同じ位置にある。


アイカツは別に活劇でも政治劇でもないけど、アイカツシステムとスターライト学園という体制の存在感が非常に強いのでミリアサ的な構造が発生している。星宮いちごの登場を契機にストイックで頂きには一人しか立つことができない美月的な孤高のアイカツから、多くの有力アイドルが並立する中での要の位置にトップアイドルが存在するいちご的なアイカツへのシフトが起こっていると理解できるし、涼川さんや三ノ輪ヒカリの存在感の強さも納得できる。リエンス王も地下アイドルを目指すべきだった。


・ニンジャスレイヤーは暗殺者が主人公であり、宰相はストレートに悪役なんだけど、そのぶん幼王であるチバが非ニンジャでありニンジャスレイヤーによって殺害されることのない位置にある。たぶんチバは最後まで死ぬことなくシステムの肯定的な側面を背負わされることになると思う。あるいはそれが罰の代わりということになるのではないか。


オーフェンでは、若王と暗殺者をマヨールとベイジットとすることもできるが、同時にオーフェンとマヨール、あるいはサルアとマジクと考えることも出来る。またオーフェンを宰相とすると魔女に当たるのはカーロッタもしくはレティシャだが、オーフェン(とその娘の三姉妹)を魔女として大統領邸を体制側のシステムと見ることも可能。これは作中の時間軸にそって登場人物の立ち位置が変化していくため。


・ログホラの場合シロエは宰相か若王か微妙な位置にいるんだけどどっちかってーと宰相の方に近いと思う。んで宰相の立ち位置はヘイトを集めやすいのでシロエ君は早めに若王ないしは真の黒幕を見つけたほうがいいと思う。でないとヘイトが集中して死ぬ。
 ログホラは他の作品より閉鎖世界性が高いので航海種周りのネタがどう展開するのか興味深い。


・比較にとARMSとエヴァウォッチメンも各要素に分類してみた。ただ、根本的なところで黒幕が企んでいる計画が、人類社会を存続させ運営していくためのものではなくて人類をいっぺんに浄化するためのものであるという点で大きな違いがあり、それゆえ発生するドラマも違うものとなる。またARMSやエヴァは作品を構成する要素が非常に多いためミリアサ構造に当てはめてみることもできるが、ARMSの巴武士のように表の中に当てはめる先がない主要キャラクターもいるし、エヴァの登場人物たちは割と無理して表に分類してるので作中での役割は表の要素のみに回収しきれないことが多い。ウォッチメンは王や暗殺者の力が弱くてとりあえずシステムの管理者が勝利しちゃう。
 とはいえ、表にしてみるとARMSは主人公チームの各人に立場・役割の違いとか、シンジとカヲルのエヴァ13号機は2wingSだったんやなとかそういうことがわかり面白い。


・というよな与太をtwitterで飛ばしていましたら、構造が似てるんじゃないかという作品として『プリンセスチュチュ』と『Ruina 廃都の物語』の名前が挙がりました。あはとブギーポップ禁書目録がミリアサ構造に当てはまりそうかどうかが気になるです。


・ごく最近だと、『夜ノヤッターマン』はミリアサ構造っぽいですね。主人公は魔女の陣営。ミリオン化してるのはヤッター兵。若王が頼りないのが特徴ですが今後どう発展するのかしらん。


・気になったら見よう。一話で困惑、二話で笑顔になり、三話で真顔になる傑作。
D

内戦と外敵の襲来によって混迷を窮めていた大地ブリテン。王の器を計る剣、エクスカリバーに選ばれた者こそが、ブリテンを救う真のアーサー(国王)のはずだった、が・・・なんと、選ばれし者は100万にも及んだ。しかし、それこそはアーサー同士を競わせることで不要な人材を淘汰し、本当の意味で国を治める真のアーサーを選ぶため、ブリテンの魔法使いマーリンの立てた計画だったのだ。アーサーをサポートするために創られた騎士ランスロット、妖精フェイとの協力のもと、「アーサー-剣術の城-」の戦いが始まる…。

ザイバツ派閥メモ

ニンジャスレイヤー キョート・ヘル・オン・アース 【下】 (キョート殺伐都市 # 8)

ニンジャスレイヤー キョート・ヘル・オン・アース 【下】 (キョート殺伐都市 # 8)

書籍版ヘルオンアース(下)巻頭でザイバツ位階総覧が発表されました。これによって一部名前が隠れている部分がありますが、ほぼ全てのマスター位階ニンジャが明らかになったわけですね。


掲載されているのはまず名誉位階である懲罰騎士ダークニンジャ、四天王パープルタコ・ブラックドラゴン・アイボリーイーグル・レッドゴリラ、執行者メンタリスト、礼拝堂守護ディグニティ。
その下の段に一般のマスター位階にあるアンバサダー・ディプロマット・ゴライアス・ジルコニア・スカベンジャー・チェインボルト・ワイルドハント・デスナイト・トゥールビヨン・ナイトメア・ストーカー・ガラハッド・ノクターン・パラベラム・バンシー・ヘリオン・ランチハンド・コンジャラー・ヴェラー・バードゥン・ペインキラー・サージョン・ブルーオーブ・ジャバウォック・ボーツカイ・ミラーシェード・メイガス・ルーシディティ・クエレブレ・クリムゾンメインの名前が有り、名前が見切れてしまっているニンジャ3名と前述の名誉位階所持者を合わせて計40名となります。


名前が見切れている3名のうち名前の末尾がスで終わるニンジャは、作中に登場した人物に絞るとヘルオンアース(下)に登場したパーガトリー配下のインソレンスが非常に有力な候補。残るには2名はニンジャ名鑑でマスター位階であるとされているヘカトンケイル、カンジ〜でのデスドレインのオミヤゲ・ストリート襲撃に先立って殺害されたと思われる名称不明のマスターニンジャがあてはまるでしょう。
フェルアスリープ〜に登場したモルフェウスも名鑑にマスターと書かれていますが本文中ではアデプトとされており、ザ・ヴァーティゴさんのコメントもあわせて考えるとこれは誤記だったようです。
モータルニンジャ〜に登場したサンバーンとディヴァーラーはtwitter版のニンジャ名鑑ではマスター位階とされていましたが書籍版ではアデプトに降格されていました。
またアラクニッドはザイバツにとって最重要ニンジャの一人ですが、幽閉の身であり位階や役職は得ていません。


ザイバツはロード・オブ・ザイバツを頂点として、最高幹部であるグランドマスター、その下のマスター、一般のニンジャであるアデプト、そして徒弟のアプレンティスからなる位階制度を持っていました。
マスター位階は単純な戦闘能力のみならず、指揮能力や礼儀作法、ワビチャやハイクのワザマエも含めた総合的な能力の高さが求められる実際名誉ある役職であり、そのためマスターニンジャ並みのカラテを持ちながらアデプト位階のままのニンジャもザイバツには多数存在していました。また一方で、ディグニティ・アンバサダー・ディプロマット・ストーカー・サージョンのようなカラテ以外の面で際立った能力を持ったニンジャがマスター位階として遇されることもあります。合体前提のヘカトンケイルもだいぶ特殊なマスターニンジャと言えるでしょう。


なお懲罰騎士にダークニンジャの、マスター位階にパラベラムの名が有り、逆にグランドマスター位階にトランスペアレント・クィリンの名がないところを見ると、この総覧は第二部開始時点のザイバツニンジャにダークニンジャを加えた時系列上には存在しない一覧であるように思われます。

ザイバツにおける派閥のうちわけ

ザイバツ建前上派閥はないことになっていますが、実態としては本来独立したニンジャ組織をロード・オブ・ザイバツの権威によって無理やりまとめ上げているような状況であり、ネオサイタマで言うならラオモトとゲンドーソーとテツオとアガメムノンとハーヴェスターとアナイアレイターが同じテーブルでお茶を飲んでいるようなものと言えるでしょう。


・貴族派閥とキョート城グループ
ともに貴族階級出身だったイグゾーション・パーガトリー・スローハンドの3人のグラマスは関係が良好で、貴族派閥を形成していました。イグゾーションとパーガトリーはマスターニンジャ以外にも数多くのアデプト位階のニンジャを配下としており、貴族派閥はザイバツ内部における最大勢力でした。なおスローハンドの直属ニンジャは少数精鋭だったそうです。
貴族派閥内部での3派閥は、イグゾーションの死後にルーシディティ・ディプロマットらがスムーズにパーガトリー派閥にスライドする程度には交流があるものの、一方でスローハンドがサンバーンたちに指令を出す際にわざわざパーガトリーからのメッセージであるように偽装する程度には壁があり、またイグゾーション派閥のマスターがパーガトリーの腹心メンタリストのゲン・ジツに対抗するための訓練を受けているくらいには緊張感を持っていました。


イグゾーション派閥に属していた事が確定的なニンジャはアンバサダー・ディプロマット・パラベラム・ジルコニア・ルーシディティ。
くわえてイグゾーション派閥はコフーン遺跡での神器発掘プロジェクトを担当していたらしく、そこからトゥールビヨンとメイガスもイグゾーション派なのではないかと思います。


メンタリスト・チェインボルト・ガラハッド・コンジャラーはパーガトリーの指示で動いておりパーガトリー派でしょう。おそらくマスター位階であるインソレンスもパーガトリー派のニンジャですね。
またブラックヘイズの雇い主が継続してパーガトリーであったとするならボーツカイもパーガトリー派なのではないでしょうか。


スローハンド派閥は少数精鋭であったとのことで、スローハンド配下として描かれているのはジャバウォックとブルーオーブのふたりのマスターニンジャと、スローハンド派閥であることを隠して汚れ仕事を引き受けているアデプトのバンダースナッチのみ。
加えて、マルノウチ抗争参加者のソーサラーが、ザイバツ側の指揮官がスローハンドかデスナイトかどっちかだと言っており、スローハンド派閥に属していたデスナイトが腰の重いグランドマスターたちの代わりに作戦を指揮していたものと思われます。相棒のバイオイーグルもスローハンド派とつながりの深いヨロシサン製薬によるものではないでしょうか。スカベンジャーもヨロシサン系の研究施設にいて自身の肉体をバイオ改造していたことからスローハンド派閥であるように思われます。開発していたバイオシカ兵士が市街戦用ってあたりも、キョートの警察機構とつながりの深いスローハンド派のやることっぽいですしね。


貴族派閥がザイバツの最大勢力ではありますが、もうひとつの大きな勢力がパラゴンを中心としたキョート城に勤めるニンジャたちです。


まずノクターン・ヴェラー・ヘリオン・バードゥンの4人はスローハンドがパラゴン直属ないしはロードの親衛ニンジャであろうと推察しており、そのうちヴェラー・ヘリオン・ゴライアスの3人は名鑑にキョート城中枢を守る親衛ニンジャという記述があります。またほとんど描写のないノクターンはよくわかりませんが、敵の動きを鈍らせるジツを持つバードゥンは他の親衛ニンジャと連携して戦うのが前提のニンジャであるように思われます。
ヘリオンの名鑑の記述からするとロードの親衛隊自体がパラゴンの管轄であるようなのでまあみんなパラゴン派という認識でよさそうですね。というかフーンクとしかしゃべれないゴライアスでもマスター位階になれるんですか。


グランドマスター・ケイビインは名鑑によるとキョート城守護の任務を与えられていました。「システム・オブ・ハバツ・ストラグル」にはキョート城内外を守護するケイビイン派閥という記述もあります。
同様にケイビイン派閥のマスターニンジャであるペインキラーの名鑑にもキョート城の中庭を守護していたという説明があり、共通して守護という言葉が使われています。


さて、他にも守護という単語を用いて紹介されているニンジャは多くいて、まず礼拝堂で日々祈りを捧げているディグニティは礼拝堂守護という名誉位階を得ていました。 
マスター位階のクエレブレは名鑑では礼拝堂手前のエリアに配置された守護者のニンジャとされており、またクリムゾンメインは礼拝堂手前のエリアに配された守護者のニンジャの中でも、ナンブ鉄に覆われた危険な戦闘ルームを任されている高位のマスターニンジャであるとされています。クリムゾンメインは戦闘においてはブラックドラゴンやミラーシェードのような目立った強さはないので、あるいはクエレブレらキョート城内勤のニンジャ達の管理職として有能な人材だったのかもしれません。
クエレブレはディグニティを個人的に崇拝していたり、ディグニティはクリムゾンメインを使命感の強いニンジャだったと評するなど、この3人は職場での距離が近かったようです。


さらにグランドマスター・ヴィジランスも、収録しそこなわれて後日公開された書籍版名鑑で電算機室守護と説明されています。
ですので守護という文言はケイビイン派閥とイコールというわけではないようです。


「トビゲリ〜」におけるギルドを破門となったバンダースナッチを捕殺対象とした警備訓練の際に、城内のニンジャとは別に庭園内を警戒するケイビインの下僕の存在が示されていた点や、ケイビインが庭師(=お庭番)として表現される機会が多い点からすると、ケイビイン派閥の警備担当領域はホンマル内部は含まず、あくまでキョート城各区の庭園や城門だったのではないでしょうか。キョート城内外の守護という表現は城門周辺の内と外とでも成り立つとは思います。


なおヴィジランス直属のマスターニンジャはストーカーの1名のみであり、またヴィジランスの配下には電算機室の電脳ニンジャ達の他、ザイバツの秘密に近づきすぎたモータルを始末する専任の掃除屋も存在しました。


またキョート城医療エリアを取り仕切っていたサージョンもマスター位階ですね。特定のグラマスの派閥に属していたかどうかがわかる描写はありませんが、属していたとしたらパラゴン派でしょうか。


さて、ヘカトンケイルは名鑑でキョート城ホンマルを防衛するマスターニンジャと記述されています。親衛でも守護でもなく防衛という単語を用いて紹介されているニンジャはコイツだけであり、任務の内容や属している派閥に違いがあってもおかしくありません。
ヘカトンケイルは合体前の3人組がパーガトリー派閥によって構成されたムーホン者討伐隊のなかに混じって登場してきているあたり、パーガトリー派の可能性が比較的高いのではないでしょうか。。


・その他
上記二つの大きなグループに加えて、比較的独立した勢力として、ミラーシェードとバンシーのふたりのマスターニンジャを抱えるサラマンダー派閥が存在します。


またネオサイタマ駐在のワイルドハントは派閥に属していませんでした。


ザイバツ・シテンノの名誉位階にあるブラックドラゴン・パープルタコ・アイボリーイーグル・レッドゴリラの4人も師トランスペアレントクィリンの失脚後は無派閥となっていましたが、うちブラックドラゴン以外の3人は後にネオサイタマからやってきたダークニンジャの指揮下に入ることになりました。


残るマスターニンジャはランチハンド、ナイトメア、それにオミヤゲストリートでデスドレイン一味に殺された名称不明のマスターニンジャです。
ダークドメインとニーズヘグは配下を持っていません。サラマンダーはミラーシェードとバンシーの他に、ヴィジランスはストーカーの他にマスターニンジャを抱えている様子はなさそうなため、派閥に入っている可能性がありうるのはイグゾーション・スローハンド・パーガトリー・パラゴン・ケイビインになります。
手がかりは少ないですが、まずアンバサダーの護衛イグナイトの師であるランチハンドはイグゾーション派閥の可能性が高いのではないでしょうか。
ナイトメアは口ぶりからするとイグゾーション派ではなさそうですし、登場したタイミング的にスローハンド派ならナンシーに構っているどころではなかったはずなので、可能性としてはパーガトリー派・パラゴン派・ケイビイン派のどれかになります。ディプロマットに対する尊大な態度、なぜか韻を踏んで喋る変なキャラクター性からするとパガ派であるようにも思えますがさてどうでしょうか。
オミヤゲ・ストリートをパトロールしていたマスターニンジャは不明な点ばかりですが、職務の内容やアデプト達を率いていたあたり貴族派閥の、なかでもパーガトリー派っぽいものを感じなくもないですね。


twitter版の名鑑ではマスター位階とされていたサンバーンとディヴァーラーもパーガトリー派です。またグラディエイターはジェノサイド捕獲に成功してキョートに移送完了すればマスター位階に出世できたらしい。ブラックヘイズがゾンビーニンジャのキャバリアーをボーツカイに送り届けていたことを思い出すと、リー先生がらみの任務はパーガトリーの指示によるもののように思えるので、グラディエイターも出世した際にはパーガトリー派の一員となっていたのではないでしょうか。


マスターニンジャの中でも地位が高そうなのは執行者メンタリスト、懲罰騎士ブラックドラゴンおよびダークニンジャ、コフーン遺跡発掘の責任者でマスター位階のメイガスを副官としていたジルコニア、マルノウチ抗争時点のまだやる気のあった頃のデスナイト、名鑑に高位のマスターニンジャと記述されているクリムゾンメイン、ネオサイタマ駐在組の実質的な指揮者だったワイルドハントあたりですね。



2部開始時点での各派閥のマスターニンジャは以下みたいな感じなのではないでしょうか。推測を多く含むので信用はしないでください。
イグゾーション派:ジルコニア・ランチハンド・パラべラム・ルーシディティ・メイガス・トゥールビヨン・ディプロマット・アンバサダー
パーガトリー派:メンタリスト・ヘカトンケイル・ナイトメア・コンジャラー・チェインボルト・ボーツカイ・ガラハッド・インソレンス・名称不明マスターニンジャ 
スローハンド派:ジャバウォック・ブルーオーブ・スカベンジャー・デスナイト
パラゴン派:ゴライアス・ヘリオン・ヴェラー・バードゥン・ノクターン・サージョン・ディグニティ・クリムゾンメイン・クエレブレ
ヴィジランス派:ストーカー
ケイビイン派:ペインキラー
サラマンダー派:ミラーシェード・バンシー
ダークドメイン派:なし
ニーズヘグ派:なし
無所属:ワイルドハント・ブラックドラゴン・レッドゴリラ・アイボリーイーグル・パープルタコ
以上39名。


ヘルオンアース開始時点では以下となります。
パーガトリー派:メンタリスト・ヘカトンケイル・ナイトメア・インソレンス・ルーシディティ
スローハンド派:ジャバウォック・ブルーオーブ
パラゴン派:ゴライアス・ヘリオン・ヴェラー・バードゥン・ノクターン・ディグニティ・クリムゾンメイン・クエレブレ
ヴィジランス派:ストーカー
ケイビイン派:ペインキラー
ニーズヘグ派:ダークニンジャ・パープルタコ
不明:ランチハンド
以上20名。半減してます。なおミラーシェードとバンシーはセプクないし拷問死させられるところをダークニンジャによって秘密裏に匿われており、ディプロマットとアンバサダーはヌケニンしてニンジャスレイヤーの協力者となっています。
2部完結時点で生き残ったのはダークニンジャ・パープルタコ・ミラーシェード・ランチハンド・ディプロマット・アンバサダーの6人のみでした。


貴族派閥

グランドマスターの派閥闘争における動きを見てみましょう。


・イグゾーション派
イグゾーション派は、所属アデプトのデトネイターがギルド内最有力派閥だったと振り返っています。イグゾーション派はマスター位階の人数も多ければその平均レベルも高く、戦略上の価値の大きいポータルの双子も抱えており、デトネイターの評価も的を射たものだったのではないでしょうか。
また、ギルドの基本方針である「格差社会」の推進をリードし体現しているのがイグゾーションであることを考えると、ロードを脇に置けば、キョートにおけるニンジャ秩序の頂点にあるのがイグゾーションであり、パーガトリーとスローハンドはその副将である、とさえ言えるかもしれません。


イグゾーションは使い捨てにしやすい野卑な下級ニンジャを多く抱えることを好む一方、実際にはニンジャソウル憑依者であろうと下層出身者のことは侮蔑しており、上流階級出身のニンジャソウル憑依者による支配を理想としていました。そのため配下のマスターニンジャは文武両道に秀でているほか総じて高慢さが目立ちます。トゥールビヨンがアッパーガイオン富裕層の出であるほか、ポータルの双子も育ちがよさそうであり、他のマスターニンジャも上流階級出身者が多いものと思われます。
また神器発掘プロジェクトにかかわっているニンジャが多いため、プロジェクトの指揮者としてのマスター位階の側面が強く出ているニンジャが多いですね。


イグゾーション派のパラベラムがロードの不興を買った際にこれを誅殺したのはダークニンジャ(とトゥールビヨン)でした。そうした因縁もあってかイグゾーションはダークニンジャに対して強い疑念を抱いており、セキバハラの秘密拠点でニンジャスレイヤーやウミノ・スドを拷問にかけ尻尾をつかもうとしていましたが、実際のところイグゾーションが死んだデスフロムアバブ〜時点でのダークニンジャはサンダーフォージの庵を探しているところであって反ザイバツの企みは特に行ってはいませんでしたし、もちろんニンジャスレイヤーとつながりがあるわけでもありませんでした。しかしヘルオンアースでの最終局面を考えるとイグゾーションの見通し自体は正しかったとも言え、大局が見えすぎるがゆえに現在の状況の理解を誤って結果として死を早めたと言うことが出来るでしょうか。


・パーガトリー派
パーガトリー派閥として登場するニンジャは作中で最も多く、派閥の規模の大きさがうかがえますが、一方で所属マスターニンジャにはカラテのいまいちな者も目立ちます。


パーガトリー派のマスターニンジャはアデプトやクローンヤクザを率いる小部隊の指揮官であることが多く、大規模なプロジェクトの指揮者としてやグランドマスター個人の側近としてではない、中間管理職としてのマスター位階の側面が見受けられます。
パガ派マスターの平均点が低いのも、パーガトリー個人の側近としてではなく一定数のアデプトニンジャの代表、中間管理職としてマスター位階に出世したからであり、そうした数多くのマスターをさらに締め上げるための存在が執行者メンタリストなのでしょう。 
ザイバツのニンジャ統治組織としての側面の代表として、キョートにおける数多くのニンジャ達と彼らの営む奴隷茶園のような非合法ビジネスをザイバツ支配の中に紐づけていくことがパーガトリーの役割であり、そのためのネンコ(年功序列)重視だったのではないでしょうか。


パーガトリーは同盟相手のスローハンドほどには頭が切れるわけではありませんが、それを自覚している、ないしは実際以上に愚鈍にふるまっており、その陰で本来なら敵対相手であるパラゴンと秘密裏に手を結ぶなどの泥臭い立ち回りをおこない最終的に他勢力を出し抜くことに成功しました。直後にザイバツが破滅したわけではありますが。
パラゴンと手を結べたのは、パーガトリーが支配者としてのビジョン・理想のようなものをとくに持ち合わせていないからという点が大きな要因でしょうね。イグゾーションやスローハンドは各々の考える理想の支配体制像があるため、パラゴンのヘルオンアース計画とは相容れない。パーガトリー派はイグゾーション派やスローハンド派と比較してよりザイバツという組織にうまく融合することができていたのではないでしょうか。


その他、イグゾーション死後にはポータル兄弟やルーシディティをはじめとした多くのニンジャを旧イグゾーション派から吸収してさらに自派閥を拡大させ、またダークニンジャがニーズヘグやシテンノと結んで大きな勢力となったことを警戒デスドレインを手引きして休暇中のダークニンジャにぶつけたりしています。


・スローハンド派
スローハンドはキョートの警察機構であるケビーシ・ガードに顧問として食い込むほか、トランスペアレント・クィリンの失脚後にクィリンの持っていたヨロシサンとの秘密コネクションを確保して、配下をバイオ改造したりサブジュゲイター開発に関わったりしていました。


ヨロシサンとの秘密裏のつながりは、スローハンドが自身のソウルの副作用で通常の1.5倍のはやさで進んでいる肉体の老化を止めるために必要としたものではありますが、スローハンドの構想するザイバツの未来像が摂政スローハンドの指揮下のもとにサブジュゲイターによって管理されるバイオニンジャとクローンヤクザたちによる昆虫めいた社会であり、それを我らが採るべき進化とまで言っているあたり完全にヨロシサンに取り込まれています。パラゴンじゃなくてもこいつ早く始末しようって思わざるを得ないのでは。
なおスローハンド配下のマスターニンジャで重度のバイオ改造者であるジャバウォックやブルーオーブやスカベンジャーは、バイオテックが開く未来という理想をスローハンドと共有していたようです。しかしバイオ改造されたものがサブジュゲイターによって支配されてしまうということは、少なくともスカベンジャーは知らされてはいませんでした。


その他、イグゾーション死後にはもとイグゾーション派のアデプトのデトネイターを使ってパーガトリーの地位の失墜を画策していました。一時的にパーガトリー派閥を太らせて最終的に貴族派閥を総取りするつもりだったんでしょうね。またマルノウチ抗争参加ニンジャがニンジャスレイヤーに次々に狩られていった際の対応の遅れをアデプトのシーホースに押し付けてカマユデにしたり、マグロ&ドラゴン社にニンジャ強盗団を送り込む手配をしたりなど、根っからの陰謀屋であるようです。


スローハンドがトランスペアレントクィリンにどういった感情を抱いていたのかは気になりますね。


なおマルノウチ抗争には貴族派閥からパーガトリーとスローハンドふたりのグランドマスターが、マスターニンジャはそれぞれの派閥からコンジャラーとデスナイトが参加しています。指揮していたのはデスナイトのようです。
グラディエイターはツェッペリンからの空挺部隊として参加していたと回想しており、どうもポータル転移でのネオサイタマ侵入ではなかった模様ですね。
テンプラ屋を襲った爆炎はサンバーンによるものでしょう。逆にソウカイニンジャではアースクエイクとビホルダーがデスナイトから高く評価されていました。
この戦いの後ザイバツとソウカイヤとの間で相互不可侵条約が結ばれるのですが、しかしマルノウチ抗争は戦闘のとばっちりを受けて犠牲となるモータルの中からニンジャスレイヤーを誕生させ、ドラゴン・ニンジャ探索の邪魔となるラオモト・カンを間接的に抹殺するため、アラクニッドの予言に従って起こされたものであり、このことはパーガトリーやスローハンドにも知らされてはいませんでした。


キョート城グループ

貴族派閥がキョートにおけるニンジャの編成という意味でのザイバツの本体であるならば、ロードを頂点としたギルドの秩序の中核であったのが、パラゴンを中心としたキョート城のニンジャたちです。


・パラゴン派
パラゴンは貴族派閥のグランドマスターからは甘言でロードに取り入った佞臣扱いされていましたが実際はギルド設立当初からの私心無き忠臣であり、アラクニッドの預言とホウリュウ・テンプル書庫に蓄積された古代ニンジャ知識を手掛かりにロードの支配を助け、キョート城を用いた新世界秩序…というか端的に世界征服を目指していました。カラテも周りが思ってるよりかは強い。
パラゴンが憎まれていたのは、本来であればキョートの支配者であるはずのグラマスたちが組織の幹部に甘んじていることでたまるヘイトの感情がロードに向かわぬよう引き受けているという面もあろうかと思います。
またパラゴン指揮下の親衛ニンジャは超堅い前衛とバフニンジャ&デバフニンジャという強力な敵を複数で囲んで袋叩きにするのに適したラインナップであり、パラゴンがいざとなればグラマスを誅殺できるように準備していたことがわかりますね。


・ケイビイン派
貴族派閥よりはパラゴンと近い関係にあっただろうケイビインは、キョート城守護の任についてキョート城の庭園に部下を配していたほか、キョート城の庭師もつとめており、まさしくお庭番であります。
ケイビインはキョート城守護の役目への責任感が非常に強く、ザイバツの久遠の歴史を誇りとし、ニンジャスレイヤーの侵入を許したときには責任を取ってセプクするつもりでした。あるいはほかのグランドマスターよりも強くキョジツテンカンホーがかかっていたのかもしれません。


・ヴィジランス派
電算機室室長のヴィジランスはトランスペアレント・クィリンの失脚後にグランドマスターに昇格したのでグラマスの中では最も新参となります。
戦闘能力ではほかのグラマスには及ばないものの、ザイバツ組織への貢献度は極めて大きいもので、電算機室はテックに疎いザイバツ上層部の中でネットワーク・セキュリティキョートの経済操作反ザイバツ分子の監視といった過大な職務に日々奮闘、ヴィジランスは職場の屋根裏に住んでいました。配下のストーカーにとっては信頼できる上司だったようですね。
ネオサイタマへの経済攻撃も行っていたらしいですがこれはゲイトキーパーによって阻まれたとのこと。ソウカイヤにはダイダロスもいるしなあ。


ヴィジランスは他のグラマスとは違い、キョジツテンカンホー・ジツの存在とザイバツの成り立ちについてある程度知っているようです。既存の組織がザイバツに組み込まれたのではなく、ザイバツ組織の中で出世し、組織の一部門のトップとしてロードとパラゴンに仕えていたが故の信頼でしょうか。おそらく出世してグランドマスターになったのはヴィジランスだけでしょう。
ニューワールドオダー成った後は何千万ものモータルを電算機室にLAN直結させ24時間体制で秩序を守り続けるぞ、と夢想していました。


ヘルオンアースではキョート城のセキュリティシステムの管理スローハンドの告発、およびモーティマーをそそのかしてオムラとキョート軍とを衝突させ、キョート城が十分にモータルの命を吸い上げるまでの目くらましとするなどの役割を果たしました。


その他

・サラマンダー派
サラマンダーはドラゴンドージョーを出奔してキョート入りしたのち、ザイバツのお墨付きを得て鳴り物入りでシャドー・コンに参戦したそうです。一方でブラックマーケットの掌握にも乗り出し、現在はシャドー・コンを主宰する一方でガイオンのヤクザ組織を支配、ドラッグの流通や賭場の管理で多大なマネーをザイバツにもたらしています。配下からはオヤブンと呼ばれてしたわれていた模様。


また古代ローマカラテ協会をはじめとした大小のニンジャ団体とのシャドー・コンを通しての付き合いも重要な仕事だったことでしょう。


おそらくヴィジランスの次に新参のグランドマスターであり、権力の基礎となっているサラマンダー自身のカラテをさらに高めるべくカラテ技の収集に余念がありませんでした。そのためドラゴンドージョーの弟弟子でチャドー暗殺拳を使うフジキドに対して強い興味を示し、またネオサイタマから移送されてきたドラゴン・ユカノの身柄をパラゴンに渡る前に確保したりしていました。ユカノの身柄を抑えていた件は死後にパーガトリー・スローハンドらから非難され、サラマンダー派の主要なニンジャはセプクを強いられることになりました。


というかグラマスは死ぬとだいたい汚名を着せられますね。


サラマンダーはザムラ・カラテのカラダチが使えますが、この技って接近戦でスローハンド相手に超有利なので、グラマス昇格にあたって後押しになったのではないかなーと思います。


・ダークドメイン
ダークドメインは直属の配下を持っていません。ネオサイタマにもひとりで来たそうです。ディセンション以前はヤクザ処刑エージェントだったとのこと。ノーカントリーのシガーみたいなやつでしょうか。
まあ直属の配下もなにも、本来はザイバツには派閥はないことになってるんですが。


割と普段何やってるのかよくわからないグランドマスターなんですけど、ディフュージョン〜で行ってたのはマスター位階のニンジャの手に余る案件があると出張っていって陣頭指揮してこれを解決するって仕事ですよね。これもひとつのグラマスというもののあり方なのでしょう。


メンタリストの語るところによるとヨゴレニンジャのジャッジメントにディプロマットを襲撃させたのはダークドメインとのこと。自身のネオサイタマ入り後にポータルを使用不可にして、ネオサイタマに独立した勢力圏を築こうとしていたとか。しかしこれは伝聞なのでどこまで信用していいのかわかりません。
メンタリストの語るダークドメインの思惑を信じたとして、ジャッジメント(の扮装をしたガンドー)に接触したグラッジの正体はだれなのでしょうか。
時系列順に考えると、ガンドー琵琶湖に沈む→ダメインがプリントアウトしたガンドーの写真を見せながらフジキドを煽る→ソイチとガンドーが決着をつける→シージトゥ〜のラストでディープスロートから最初の通信が入る→ジャッジメントに扮したガンドーが数件の任務をこなす→グラッジからディプロマット暗殺の依頼が、という流れ。ダメインが死んでからグラッジが接触してくるまでそこそこ時間が開いてます
ダメインが死んだ後も暗殺の指示だけが生き残っていて、ということもありえなくはないでしょうけれど、基本的にはディプロマット暗殺は他の派閥が計画したことで、暗殺失敗後に既に故人であるダメインに濡れ衣を着せたのだと考えたほうがいいでしょうか。ポータル転移の大きすぎる戦略的価値はどこの派閥から疎まれてもおかしくはないです。


なお、ネオサイタマ駐屯組の実質的な首位はマスターニンジャのワイルドハントでしたが、ワイルドハントさえ使用すると3割の確率で死傷するというポータルをとおってネオサイタマにやってきており公式に責任者というわけではないようです。
マルノウチ抗争の際はふたりのグランドマスターが帯同しましたが、インフレイム後のネオサイタマ急襲と統治はワイルドハント・アンバサダー・デスナイト・ボーツカイの4人のマスターニンジャによる共同作戦。やはりグラマスを長期にわたってキョートから離れた場所に置くのはまずいでしょうか。
ワイルドハントは派閥には無所属。ザイバツ上層部の派閥体質や腰の重さを嫌っていましたが、そのぶん苦労も多かったようです。ネオサイタマ行きにしても、キョートこそ世界の中心と思っているザイバツニンジャ立ちからすればネオサイタマは左遷先であり、部下のアデプトも腕は立つものの素行に問題がある奴が多かったです。
なおワイルドハントがダークドメインを後ろ盾としていたというよな記述もありますが、一方でダークドメインに向けてワイルドハントは初対面のような挨拶をしています。アキュミュレイションでダークドメインが率いたスゴイタカイビル包囲作戦の大部隊を、シージでワイルドハントが再編成して率いたことがマスター位階の分を超えた行為と見なされて、後ろ盾を失ったという表現が使っているのかなーと思います。
マルノウチ抗争と同様、ザイバツのネオサイタマ占領はドラゴン・ニンジャ探索のための拠点の確保のために過ぎず、その隠された目的は陣頭指揮を執るマスター位階のニンジャ達にも明かされていませんでした。
ワイルドハントの戦死後もザイバツの残存勢力はしばらくネオサイタマで頑張っていたようですが、HoE後はザイバツ崩壊とテンカンホーの消滅でずいぶん大変な目にあったようです。


・ニーズヘグ
ニーズヘグも普段何やってるのかよくわからないグランドマスターではありますけれど、作中で描かれていた任務はオミヤゲストリートへの緊急投入であり、バジリスク「フタツアタマヘビ」という名称のチームを組んでた時代からずっとそういう役割を続けてきた人なんでしょうかね。
同門で相棒だったバジリスクは、ヘルオンアース(下)の表には名前が無いものの、2部開始以前のバジリスクがザイバツヌケニンする前の時点にはマスター位階だったとしてもおかしくないと思います。


二部前半は派閥を作っていませんでしたが、その後ダークニンジャおよびシテンノの後ろ盾となり、ヘルオンアースでのムーホンの際も行動を共にしました。ダークニンジャがニーズヘグにかけた誘い文句は「俺が構えるイクサは、ロードが起こすイクサより遥かに邪悪で大きいだろう」でした。戦闘狂ですねえ。


・トランスペアレントクィリン
かつてグランドマスター位階の地位にあったトランスペアレントクィリンは、ヨロシサンとのコネクションを持ち、弟子のシテンノたちにそれぞれバイオサイバネの移植をさせ、自身も全身透明という常軌を逸した人体改造強度を誇ります。
またヴィジランス以前にキョート城のセキュリティシステムを管理していたのもクィリンであり、それゆえ秘密裏にキョート城のなかにヨロシサン用の秘密トンネルを建造することが可能でした。
弟子4名をシテンノという名誉位階に押し込む政治力はかつてのクィリン派閥の権勢を感じさせますが、あるいはシテンノはクィリン派閥からもやや独立した位置にあって、それゆえに師の失脚後も地位を失わなかったのかもしれないと思います。
クィリンは第二部開始以前にテンカンホーの影響下から脱し、シテンノを捨ててザイバツを去ると、そのままヨロシサンの重鎮の座に迎え入れられることとなりました。


一方、クィリンが去った後のザイバツ・シテンノは、どこかの派閥に属することなく無所属となっていました。ブラックドラゴンが懲罰騎士の地位にあり、アイボリーイーグルが拷問吏、レッドゴリラが武装シンカンセン警護の任務に就く一方で、デスド一味のオミヤゲストリート襲撃など戦力が必要な時に緊急で投入されるポジションでもあったようです。
シテンノの四人は仲間意識が非常に強く、ブラックドラゴンが死んだときは弟子のシャドウウィーブをパープルタコが引き取ったりしていました。


・ダークニンジャ
ダークニンジャはソウカイヤを抜けてキョート入りした後、ソウカイヤのキョート潜伏班を壊滅させて信頼を得てザイバツ入り。この際ダークニンジャの監視についていたのはミラーシェードでしたが、パーガトリー派やスローハンド派はマルノウチ抗争でダークニンジャと因縁があるためサラマンダー派のミラーシェードが選ばれたのでしょう。
その後はトゥールビヨンとともにパラベラムを討伐、そのままマスター位階ですらないのにトゥールビヨンを副官としてアンダーガイオン十三階層地盤ぶち抜き計画を指揮しています。このへんの、ザイバツの位階システムをすっとばした出世の仕方は不可解なんですが、とはいえ他のグランドマスターたちもヴィジランスを以外は地道に出世したのではなく、周りからグランドマスター以外ありえないと思わせて問答無用でグラマスになったんだろうなあと思います。
その後、デスドレイン一味のオミヤゲストリート襲撃に対処した功績で、ブラックドラゴンが死んだ後空位になっていた懲罰騎士の地位と聖なるガントレットの使用の許可、ホウリュウ・テンプル書庫の古代ニンジャ知識へのアクセス権を得ました。
またオミヤゲストリートで共闘したことがグランドマスター・ニーズヘグやシテンノと親交を深めるきっかけともなり、この突如出現した有力派閥はとくにパーガトリーとの間に確執を生むことになりました。
しかしダークニンジャの真の目的はあくまで折れたるベッピンを鍛え直すことと、己の運命と対決するための知識を集めることであり、最終的にはキョート城を誤った方法で使おうとするロードに対してニーズヘグやパープルタコ、それに元サラマンダー派閥のミラーシェードやバンシーとともにムーホンを起こすこととなるのでした。


まとめとその後

派閥視点からの第二部の主要なトピックはパラゴンのネオサイタマ政策とイグゾーションの死、ダークニンジャ派閥の形成、それにヘルオンアース。イグゾーションの死後、パーガトリーは旧イグゾ派を自派閥に吸収する一方、スローハンドはパーガトリーの追い落としを画策して総取りを狙っていました。


ザイバツ組織の内部には本来のキョートの支配者たちである貴族派閥と、ロードの下の秩序の中核としてのパラゴン・ヴィジランス・ケイビインのキョート城組があり、やや規模の小さい勢力としてキョートのヤクザ組織を支配していたサラマンダー派閥、そこに新たな有力派閥としてダークニンジャ派閥が加わることになりました。


他のグラマスと違い成立後のザイバツ組織の中で出世してグラマスとなったヴィジランス、ザイバツの歴史を頭から信じ込んで忠義を尽くすケイビイン、支配者としてのヴィジョンをとくに持たないパーガトリーはパラゴンのヘルオンアース構想に乗れますが、上流階級出身のニンジャによる支配を理想とするイグゾーションや、バイオ改造されたニンジャたちをサブジュゲイターで管理する昆虫めいた社会を目指すスローハンドはパラゴンとはどうしたって相容れなかったでしょう。というかスロハンはヨロシサンに取り込まれすぎでは。


ヘルオンアース後、崩壊したザイバツ組織はダークニンジャのもとに再編されました。ニーズヘグ・パーガトリー・パープルタコ・ミラーシェード・ランチハンドがこの新ザイバツに所属し、またネクサスをはじめとした新顔のニンジャやこれまでのザイバツでは評価されなかった無骨もののベテラン、いきのいい若手のニンジャもいるものの、さすがにその規模はかなり縮小されています。かつてのザイバツと比較してより実力主義の組織になっているのが特徴ですね。異次元を漂うキョート城がニンジャスレイヤーの物語の中に再び登場する日はいつになるのでしょうか?

ログ・ホライズンとニンジャスレイヤーを比較してみた

ニンジャスレイヤー キョート・ヘル・オン・アース 【上】 (キョート殺伐都市 # 7)

ニンジャスレイヤー キョート・ヘル・オン・アース 【上】 (キョート殺伐都市 # 7)

  ログ・ホライズン ニンジャスレイヤー
超人 冒険者(PC) ニンジャ
非超人 大地人(NPC モータル
そもそものきっかけ 大災害(MMORPGの現実化) Y2K2000年問題)を発端とした電子戦争とニンジャソウル憑依現象の加速的増加
東の大都市 アキバ ネオサイタマ
東の大都市の統治組織 円卓会議 ソウカイ・シンジケート/アマクダリ・セクト
東の大参謀 シロエ ゲイトキーパー/アガメムノン
東の大参謀の庇護下にある子供 トウヤ/ミノリ ラオモト・チバ
反社会的人格者 デミクァス/ロンダーク ニンジャスレイヤー
非超人の協力者 レイネシア/リ=ガン ナンシー・リー
転化者 ルンデンハウス=コード シャドウウィーヴ
ミュージシャン 五十鈴 DJゼン・ストーム/ニスイ・タニグチ
ファストフード 軽食販売クレセントムーン 無人スシ・バー
産業の担い手 生産ギルド 暗黒メガコーポ
世界の秘密に迫る独立勢力 カナミとゆかいな仲間たち フジオとゆかいな仲間たち
西の大都市 ミナミ キョート・リパブリック
西の大都市の統治組織 Plant hwyaden ザイバツ・シャドーギルド
西の象徴君主 濡羽 ロード・オブ・ザイバツ
北海道の都市 ススキノ ドサンコ・コロニー


・善悪が反転している箇所が多い
・ファンタジーサイバーパンクというジャンルの差こそあれ、ともに異世界化した日本を舞台としている。日本が舞台であることで読者が異世界へ入りこみやすくなるだろうし、テーマやメッセージの迫真性を強化する効果もあるだろう。またそもそも、皮膚感覚から理解できる異世界描写はラノベファンタジーでしばしば追求されてきたものである
・両作とも関東と近畿の中心都市が突出して発展しており、ほかの地域は荒廃している。
異世界化した世界を舞台としていることで、こんな世界は間違ってるという感覚が導かれる。このへん閉鎖世界→http://d.hatena.ne.jp/hatikaduki/20080428/1209400133と似てるんだけど、ログホラや忍殺には女神的な存在はいない
・前提としての世界が間違っているために、その世界におけるヒーローは腹黒メガネや狂人といったダークヒーローになりがちなのかな
・ログホラはデミクァスやロンダークそれぞれのその後の行く末については、作者の問題提起とそれを消化しようとする意思は感じるし、そこにはとりあえず侮蔑されるべき者の喩えとしてマケグミ・サラリマンをもちだすようなベッタベタな邪悪さはないんだけど、それでも作品を成立させるために結局はそいつらを小者として描かざるを得ない。いっぽうで忍殺もゲイトキーパーやアガメムノンをわかりやすい悪者として描写せざるを得ず、故に原作者は作品を「理想的なディストピア」と語り、あなたの親や上司はニンジャではないので殺してはならないと釘を刺す。それは作品の限界ではあるけど、そもそも別にそれが作品の主眼ではないのでそんなとこに深入りせず浅く触れるにとどめるのが正解である
・深入りすると『ウォッチメン』のオジマンディアスとロールシャッハになるけど、ログホラも忍殺も別にウォッチメンではない
・イン殺さんのウォッチメンの紹介→http://kill.g.hatena.ne.jp/xx-internet/20090613/p1
・エンタメ作品におけるテーマは、レイヤーの違う読み筋を用意することで作品の面白さに交響楽的な奥行をもたらすために存在するに過ぎない。ただしテーマを面白く語るためには一定のマジさが必要ではある
・ログホラはシステムの善の側面を奉じて個人には自己変革と連帯を求める。システムによってもたらされる幸福ってのはつまりメシと金と家だ。忍殺の作者は二人組だけど、比較的マッチョで自己変革寄りなボンドはシステムに囚われた人々の目覚めと闘争をかっこよく描き、よりセンシティブなモーゼズは弱者や敗残者に寄り添う姿勢を示す、ように思われる。とはいえ互いが互いに影響を与えあっているだろうし、また二人とも理不尽への怒りと努力(カラテ)の積み上げを尊いものとしている
・ログホラは思いっきりゲームだけど忍殺もTRPGの影響の感じられる作品ではある。NPCの自立と逆襲という物語はニンジャスレイヤーにおいてはカブキ・コムが担う気がするけど今のところよくわからない


魔術士オーフェンの原大陸編は、魔王たるオーフェンが勇者たるクリーオウやマジクと手を取り合って、物語の終わったその先の世界でより良い社会を目指してまおゆうしてみたところ最終的に出来上がったのがソウカイ・シンジケートであることに苦悩する話とか言えるかな。オーフェン=ラオモト・カン、マジク=ダークニンジャ、エド=インターラプター、クレイリー=ゲイトキーパーって感じ
・忍殺は第三部になってニンジャがわりと社会化された存在として描かれるようになったのでオーフェンと比較しやすくなった気がする
・短編集楽しみです

魔術士オーフェンはぐれ旅 魔王編

魔術士オーフェンはぐれ旅 魔王編

・というかエンターブレインのソフトカバーは面白いの多いですよ。世界が間違っていることを前提にその異常なありようを活用しながらサバイバルするある種のマタギみたいな主人公を軽快に描く『この世界がゲームだと俺だけが知っている』や、登場するのはNPCのみのまあつまりは正統派エピック・グルメ・ファンタジーである『辺境の老騎士』の2作はめちゃめちゃ面白いし、あとは魔王ルートを邁進する『オーバーロード』もなかなかです
この世界がゲームだと俺だけが知っている 4

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辺境の老騎士2 新生の森

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好きラノ 2014上期に投票

のうりん 8 (GA文庫)

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【14上期ラノベ投票/9784797376579】
四天農メイン巻なので面白くならないわけがないです。


【14上期ラノベ投票/9784040662206】
あこがれのお姉さんや幼馴染など、萌えが時間方向にロングスパンなのが特徴。エロい。


辺境の老騎士 1

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【14上期ラノベ投票/9784047293656】
海外ファンタジー児童文学の古典を読んでるような気分になります。


この世界がゲームだと俺だけが知っている 4

この世界がゲームだと俺だけが知っている 4

【14上期ラノベ投票/9784047294929】
安定。外伝も良いです。


ニンジャスレイヤー ピストルカラテ決死拳 (キョート殺伐都市 # 5)

ニンジャスレイヤー ピストルカラテ決死拳 (キョート殺伐都市 # 5)

【14上期ラノベ投票/9784047293625】
ノンストップアクションと探偵の再起。TRIGGERで来年のアニメ化も決まりましたねー。


【14上期ラノベ投票/9784864722292】
祝完結。まだ短編集が出るらしいので期待。


フリーライフ ~異世界何でも屋奮闘記~3 (フリーダムノベル)

フリーライフ ~異世界何でも屋奮闘記~3 (フリーダムノベル)

【14上期ラノベ投票/9784906878307】
異世界での日常。表紙がまたよいです。