2013上半期面白かったラノベ投票

好きラノ(http://1se.sakura.ne.jp/lightnovel/2013_01-06/)に投票。


魔術士オーフェンはぐれ旅 鋏の託宣【通常版】

魔術士オーフェンはぐれ旅 鋏の託宣【通常版】

【13上期ラノベ投票/9784864720984】
社会の軋轢と人の想いと天を穿つ大魔術が錯綜するなかで、主人公の好感度が上がりっぱなしなクライマックス一歩手前。


翼の帰る処 4 ―時の階梯― 上

翼の帰る処 4 ―時の階梯― 上

【13上期ラノベ投票/9784344827462】
あなたそんなハーレクインみたいな人でしたっけ?病弱宰相の意外な一面に戦慄するもそれはそれでありかな!


オーバーロード3 鮮血の戦乙女

オーバーロード3 鮮血の戦乙女

【13上期ラノベ投票/9784047286894】
ゲーム世界に現出しちゃったので魔王プレイ。高めな女子を叩き潰したりしよう!


ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上 (4)

ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上 (4)

【13上期ラノベ投票/9784047286900】
ラスボス拠点に単身殴り込み!全員殺す!文章によるバトル表現の最高峰がここにあるのだ。


【13上期ラノベ投票/9784048915335】
ひゃっほう撤退戦のしんがりだ!諸君わたしは戦争が好きだとか言いたくなる第3巻。


この世界がゲームだと俺だけが知っている 1

この世界がゲームだと俺だけが知っている 1

【13上期ラノベ投票/9784047288157】
ゲーム的異世界で遊び倒すライトFT!こういうの好きですよ僕は。


ナイツ&マジック 2 (ヒーロー文庫)

ナイツ&マジック 2 (ヒーロー文庫)

【13上期ラノベ投票/9784072896679】
バトルもあるけどその前に作れ、ロボを!無双とモノづくりがバランス良く高値安定の2巻。


むう。まとめてみるとなんだかいかにも富士見世代な感じがしますね。

『この世界がゲームだと俺だけが知っている』感想

この世界がゲームだと俺だけが知っている 1

この世界がゲームだと俺だけが知っている 1

この世界がゲームだと俺だけが知っている 2

この世界がゲームだと俺だけが知っている 2

バグだらけのゲーム世界という設定を生かしきっていて大変面白いです。これはよいですよ。
あらすじを1巻帯から引用しますが、「“ぼっち”ゲーマー相良操麻は、ある日悪名だかいバグ多発ゲームの世界に入り込んでしまう。「理不尽」と「運営の悪意」を具現化したようなゲーム〈猫耳猫〉の世界でバグ仕様を逆手にとったソーマの冒険がはじまる!」という話。


主人公ソーマを案内人としてバグだらけの不思議な異世界を旅して回るんですが、バグだらけであることが異世界の魅力を損ねてないんですよね。
自立的な異世界の魅力をゲームっぽさ剥き出しであることでスポイルしたりしてないんです。むしろ逆。
異世界として立ち上がった瞬間からバグはこの世界にとって所与のものとなっていて、バグこそがこの世界における自然なんです。ゲームが現実になったものという設定だからこその、それ故の歪みを生かした、そうだからこその面白さをもったそういう世界なんです。
現実と化したゲーム世界におけるバグは、ゲームの製作者やプレイヤーからみても、また異世界に住む人々からみても、どちらに立つ人間から見ても異常で不思議で理不尽なものとして、かえってこの「猫耳猫」世界の存在の確かさに貢献し、リスぺクタビリティを生みだしています。異世界ファンタジーとしての魅力とゲームというジャンルへの愛情が高いレベルで結びついていると言えるでしょう。そしてこのびっくり箱のような不思議さに満ちた世界を、案内人たるソーマとともに探検して回るのが、これがたいへん楽しい!


なおゲームの設定と異世界FTの歪みによる面白さは、キャラクターメイクにも生かされてますね。登場イベントの都合のために大量のモンスターに追い回されたり友達が一人もいなかったりする、大変かわいそうな設定のもとに生まれている駆け出し冒険者の女の子トレインちゃんなどは、キャラクターを設定ががっちり支え、そのうえでさらに設定からはみだしてキャラクターが成長しはじめており極めて魅力的です。


あとゲームを題材にした作品は自然とゼロ年代ノリな、「この社会はある種のゲームであり、ヒーロー性は非情な現実に対して主体となって取組む者、即ちプレイヤーに宿る」というテーゼを抱えるもんでして、主人公ソーマもそれは同様なんですが、ソーマは問題にたいして提示する解決策が常に斜め上なので精神的マッチョ感が脱臭されているといいますか、凄いは凄いけど偉い感じは一ミリもしないのでかえって素直に応援できるよなとこがあります。このへんも好感度の高さのポイントだと思います。


全体としては笑いどころあふれるライトFTでして、もはや若い世代には通じないかも知らんですけど『フォーチュン・クエスト』とか『極道くん漫遊記』とかあるいはハヤカワの「マジカルランド」シリーズとかあんな感じの感触ですね。
軽快・軽薄でヒネくれており、しかしジャンルに対する愛があり、その冒険はすごく楽しいのです。ライトFTが好きな人にはオススメの作品。

『風立ちぬ』感想

風立ちぬ』見てきましたけどかなり良かったです。
 ・二郎カッコイイすね。宮崎駿は特にもののけ姫以降、力強いアシタカ、凛としたハク、ミステリアスなハウル、理想的5歳児の宗介って具合にイケメン男子の描写には力を入れてましたけど、二郎はそのへんと比較してもトップクラスかつ全く違った類型の大威力イケメンぶりを発揮しております。まだこんな引き出しがあんのかよハヤオさすがだなと思いました。
 ・まあ全部が全部全く新しいわけじゃなく、秀でた額とメガネと夢を追う姿勢からはああこいつは「かっこいいムスカ」なんだなあと思われますが、高い知性ゆえの不遜なまでの揺るがなさや、いつもぼんやりしているような芸術家肌の天才ぶりはかつて見たことのないもんです。あと庵野秀明もそりゃうまくはないですけどよくハマってました。
・美術がまた良いです。非常に場面転換が多い映画でパッパ、パッパと背景が切り替わるんですがそれがいちいち良い。コストかかってますナ。こういうのは魅力ある一方であんまりじっくり見せられると飽きてしまうものですが、場面の切り替えや電車に乗りながらなどの動きのある場面が多いために飽きさせません。
・トトロやもののけ千と千尋とは映像の質感が違いますよね。背景はただ背景であり、物質には霊力は備わらない。軽井沢にコダマがいるわけもなく。けれど、少なくともこの作品に関してならそれは別に欠点ではありません。時代がからず、幻想的にもなりすぎず、過剰な意味を与えられることのない背景美術は、あくまで人の住む世界として、また当時における現在として、風とおし良く美しいです。
・ヒロイン菜穂子はメイ系を除いたジブリヒロインの集大成みたいなキャラクターでしたが、それに限らずセルフパロディみたいなシーンがちょいちょいあります。でもそれにたいしてあんまり否定的な気持ちにならないのはハウルやポニョよりだいぶ脚本がまともだからでしょうなあ。むしろ千と千尋よりあとに作られたスタジオジブリの佳作・凡作・失敗作群も無駄にはならなかったんや!と思われました。や、ハウルとか結構好きではあるんですけどね。

二郎と菜穂子

・二郎と菜穂子の関係は見終わってすぐは抵抗がありました。なんだかんだで男に都合のいい話ではありますし、例えば僕の母なんかは仕事人間の父に苦労させられてきたんで、ちょっと一緒に見に行く気にはなれん映画ではあります。
・ただ、それだけで二郎と菜穂子の関係を言い表せるかというともうちょっと複雑で。
・二郎は英雄的人物です。英雄ってのは、オレ定義で申し訳ないですが、「大業を為すが人を救わず、やがて死ぬ」人物です。ヤマトタケルとかね。仮面ライダー的なヒーローとの対比としてワードです。その両方が交じり合ったキャラクターも多いですし、二郎が人助けをするシーンも何度かありますが、基本的には二郎は前者よりのキャラクターです。
・けれど二郎は伝説の中の英雄ではなく、あくまで歴史の中の人間に過ぎません。そもそも少年二郎が挫折するところから始まってる話でもありますしね。その二郎がなぜ英雄的人物としてあることができたのかと言えば、それはもちろん菜穂子のおかげであります。
・では菜穂子はどんな人物であるか。二郎はその職分においては天才ですが、人間との関係においては属性は善ではあるもののペラッペラの人間性しかもたない人物です。一方で二郎を支えた菜穂子も、これもやっぱり超絶可愛いけどそれ以上の人間ではない。
・菜穂子は働かないんですよね。宮崎駿作品らしからぬことに。病気だからなのはもちろんありますが、そもそも家事などまるっきりできない可能性が高い。お嬢だから。
・母の死と自身の病によりお嬢様以外の何かになる機会を逸したままこれまで生きてきて、かつ余命幾ばくもなく今後お嬢様以外のものになれる可能性も奪われているのが菜穂子です。だから菜穂子は山を下り、かつて見た夢をある種の作品として形にすることを選んだ。菜穂子は飛行機には一ミリも興味がありませんが、夢を形にすることに固執している点では二郎と相似しています。
・九試単のテスト飛行の日、二郎の夢が形となったことを確信した菜穂子は二郎のもとを去ります。それは病による容色の衰えを見せぬため、溜め込んできた二郎への不満や死への恐怖を吐露せぬため、そして自分自身の薄っぺらさを隠すためであり、作り上げた美しい夢を汚すことを恐れたがゆえです。
・さて二郎は伝説的名機を作り上げましたが、菜穂子は死に、日本は戦争に負け、二郎の飛行機は敵味方ともに多くの人間を殺しました。けれど二郎は死ねなかった。
・ラストシーン、カプローニとともに夢のなかにあらわれた菜穂子は「生きて」と呼びかけます。その先にあるのは人間としての人生です。英雄的ではない、長くて不格好な、けれどけして意味の無いわけではない人間としての人生を「生きて」と。
・薄っぺら薄っぺら言いましたけど、菜穂子がいろいろなものを飲み込んだ上でなお「生きて」と言える人間であることもまた描かれていたと思いますし、その『生きて』と言うセリフにその先にある堀越二郎のその後の人生と、さらに宮崎駿フィルモグラフィーおよび今まさに鑑賞している『風立ちぬ』というなかなか悪くない作品の存在がオーバーラップしてぶっちゃけ感動します。
・パンツを下ろすの下ろさないのみたいな話があるようですが、その喩えで言うならこの瞬間、パンツいっちょで粘っていた宮崎駿がこの「生きて」のセリフとともに一気にパンツを下ろす、そういう映画であるなあと思いました。

最近好感度の高い主人公

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (ガガガ文庫)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (ガガガ文庫)

比企谷八幡は基本的には職業ボッチLV.100であるがゆえに、自分は幸せになれないけどとにかく問題は解決できるダークナイト野郎なんですが、彼はほんとういい子です。平塚先生とかコイツのことがかわいくてかわいくてしょうがないと思います。
八幡って他人に対して何も期待しないようにしてますし、他人が自分を好きになってくれるとも好きになって欲しいともそんなには思ってないのに、自分からはわりと他人のことをほいほい好きになるんですよね。この好きってのは恋愛感情じゃなくて好感度的な意味ですが。ひねくれてるけど根は素直で、フェアで、愛に満ちている……ように思います。6巻でテンションあがって「愛してるぜ!」を連発したときにはこれがこの子の本質であるなあと思いました。


翼の帰る処 (上)

翼の帰る処 (上)

4章に入って人間関係に大きくうごきがあったんですが、ええと、これは何なんでしょうか。なぜなにもなかったかのように、以後そのことに言及することも態度の変化もなくシレっと仕事してるんでしょうかこの病弱隠居中年。まさかヤエトがこんなケダモノだったなんて……!
なんだか恋愛模様を見るときのニヤニヤとは違った種類の笑いがこみ上げてくるんですが、これはこれで不思議と好感度はさらに高まりましたし、今後どうなっていくのかはすげえ気になります。


魔術士オーフェンはぐれ旅 解放者の戦場【初回限定版】

魔術士オーフェンはぐれ旅 解放者の戦場【初回限定版】

魔術士オーフェンには主人公が3人います。1・2部におけるオーフェン、語られざる3部におけるマジク、そして4部である原大陸編におけるマヨール。
オーフェンはその本質的な高潔さゆえにわかりやすい大義に背をむけなければならない人物でした。
マジクが2代目主人公をつとめたであろう第3部は描かれていませんが、マジクの少年時代と現在の落差から類推するに、かつて才能に溢れ・目端が利き・人に好かれる美少年だったマジクが、戦争の極限状況の中で周囲の大人たちに使い潰されていくたいへん鬱々とした話だったのではないかと類推されます。ユリアン・ミンツだったはずが気がつけばカミーユ・ビダン、みたいな。
んで、原大陸編の新主人公マヨール・マクレディなんですが、こいつが非常に好感度高いです。
最初『約束の地で』で初登場した時はとくだんおもしろみのないキャラだったんですよ。若いのに頭の固い、エリート一家の長男坊で。それが、再登場したときは何か雰囲気が違うんですよね。角が取れてて。しかも生意気にも婚約者を連れています。
マヨールの婚約者イシリーンは、旧シリーズに登場せず旧シリーズのキャラと血縁関係にも無い完全新規キャラで、かつそのほかの完全新規キャラと比べても最も活躍シーンの多い登場人物です。つまり、ベタにもメタにも旧シリーズからの積み重ね・しがらみから自由なキャラクターが、その自由な意思でもってマヨールと婚約しているんですよね。イシリーンという人物自身も気が強く独立心も生活力も高い女性として描かれており、その点からもマヨールという人物によほど好意を抱くにたる何かがなければ婚約なんかせんだろうなあと思われるのです。
じゃあそれはいったいなんだったのか。マヨールはなにを得たのか。
ポイントなのはマヨール自身はそんなに変わってないってことで、基本的には『約束の地で』で初登場した時と同じつまらない堅物のエリートです。そういう、つまらないなりに確かなマヨールのマヨールらしさを持った上で、でもそれ「だけじゃない」奴なのがいまのマヨールという人物であるように思います。自分自身を持ちながら、自分らしさや自分の立場に閉じこもることなく、ときに相手を慮り、ときに自分らしくないこともやってみる。
読めてる人には『原大陸開戦』の時点で読めてたんでしょうけど、自分は『鋏の託宣』でようやく言語化できました。
力の怪物でも個性の怪物でもコミュニケーションの怪物でもなく、まばゆい勇者でも昏き魔王でもなく、平凡ではないけどとりたてて特別でもない奴が自分自身の枠組みをちょっとだけ踏みこえてみせる事に焦点を当てたキャラメイクには、西森博之作品的な奥ゆかしい魅力を感じますね。

1361203435*2012年に面白かったものとかを簡単に

ぼおるぺん古事記 (一)天の巻

ぼおるぺん古事記 (一)天の巻

昨年の収穫の筆頭。日本!古代!歴史!神話!ってなふうに肩肘張らず、角の取れてのびのびとした自然体の古事記。お勉強っぽさが取っ払われた結果、民話としての普遍性と物語としての個別性がかえってよくわかるうえに、エンタメとしてもすごい優秀です。
現存! 古代生物史 パッキー 1 (ジャンプコミックス)

現存! 古代生物史 パッキー 1 (ジャンプコミックス)

昨年始まって昨年終わったマンガ。パッキーすごい好きだったんですよねー。デフォルメされたさまざまな古生物たちの活躍と彼らから見た現代日本人の生態を描くギャグマンガ。先日打ち切られた『烈!伊達先輩』だとか、ここのところのジャンプはレベルが高すぎる。
花の詩女 ゴティックメード オリジナル・サウンドトラック

花の詩女 ゴティックメード オリジナル・サウンドトラック

氷のカイゼリンの起動シーンは本当に見物でありました。これを見ずに死ぬべきではないすよ。クールかつキュートなトリハロン殿下の見せるさまざまな表情も旨みに満ちてます。FFSのリブート1〜7巻もすぐ買ってきましたとも。
映画 ホビット 思いがけない冒険 オリジナル・サウンドトラック

映画 ホビット 思いがけない冒険 オリジナル・サウンドトラック

ホビットもよかったです。大して長くない原作を3部作でやる分、たいへんのんびりと異世界と冒険を満喫できます。しかしオッサンが13人押しかけてくるって本当にむちゃくちゃなはじまりだなあ。
ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上 (1)

ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上 (1)

あとはいまさら言うまでもなくニンジャスレイヤーの書籍版ですね。ビジュアル化されたシックスゲイツが泣くほどカッコいいです。
レ・ミゼラブル~サウンドトラック

レ・ミゼラブル~サウンドトラック

それから2013年に入ってから見たんですが、レミゼは素晴らしくよかったです。19世紀パリ、福祉も公衆衛生もない時代の過酷な都市社会を舞台に、人間の善性と意志を描く。大河ミュージカルなもんですから、重厚だけど重くなりすぎず、楽しいけれどそれだけではない。んで感情を揺さぶる歌と演出とセット。バリケードを筆頭にセットがすごい良いです。


そのほか継続作品でよかったのは以下あたりかな。さて今年はどんな作品にであえることでしょうか?

BUTTER!!!(5) (アフタヌーンKC)

BUTTER!!!(5) (アフタヌーンKC)

風雲児たち 幕末編 21 (SPコミックス)

風雲児たち 幕末編 21 (SPコミックス)

乙嫁語り 4巻 (ビームコミックス)

乙嫁語り 4巻 (ビームコミックス)

嘘喰い 25 (ヤングジャンプコミックス)

嘘喰い 25 (ヤングジャンプコミックス)

魔術士オーフェンはぐれ旅 解放者の戦場【初回限定版】

魔術士オーフェンはぐれ旅 解放者の戦場【初回限定版】

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (6) (ガガガ文庫)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (6) (ガガガ文庫)

ラノベの悪役についての散漫な

良い悪役と悪い悪役について
http://togetter.com/li/457286

ラノベにおける名悪役については時々考えていたりします。
悪役に限らずキャラクターの偉大さって大きく分けて、存在の「大きさ」「稀さ」「確かさ」に+して好感度の4つだと思うんですが、ええとフジリュー版『封神演義』で説明します。
つまり、作中最大の盛り上がりを見せた仙界大戦編のボス敵であり、かつ殷王朝・金ゴウ島の2大敵組織の代表としてその大きさ・強さ・正統さといったプラスの価値を一身に背負っていた聞仲は、その存在が作品の構図と融合しているがゆえに存在の大きい敵キャラだったと言えると思うわけです。
一方で、メインヒロインと暫定ラスボスを兼ねていた妲己は史上稀にみる悪役であったと思います。
また、超公明は仮に出てこなくても大きく影響のないキャラクターではありますが、しかし確固としたキャラを貫くさまには強いインパクトがありました。趙公明はド派手なキャラですけど、地味なキャラでもちょっとした描写の中にキャラの把握の確かさがあると、後々まで記憶に残りますよね。
なおこの3人の中では、長く登場して作品を引っ張り続けた功績や、ラストの鮮やかな逃げきりをかんがみて妲己がトップ悪役だと思います。つーか妲己はジャンプ史上の名悪役十傑とかやってもランクインすると思いますが。あと3人とも好感度はとりたてて高いタイプじゃないと思います。


さて。ライトノベルって悪役らしい悪役が登場しづらいジャンルなのかもしらんなーと以下の記事を読むと思うわけですが。

私はどうしてライトノベルが苦手だったのか
http://www.ne.jp/asahi/otaphysica/on/column130.htm

外部視線からみたラノベとはなんぞやについての考察で、なんど読んでもいい記事です。
たしかにオーフェンとかリアルバウトとか封仙娘娘とかのアクションものでさえ、考えていくうちにわけわかんなくなって「もうちょっと悪役らしい悪役おらんのかいな?」「そんな簡単な話じゃねーんだよ!」なんてな脳内問答が交わされたりします。まあオーフェンもヘルパート&ライアンとか地味ながらイイですけどね。まあさておき。
それでもさすがにジャンル全体で探すと名悪役もいます。


銀河英雄伝説」から、滅ぼす事のかなわぬ恐るべき邪悪にして民主主義社会の生んだ怪物、ヨブ・トリューニヒト。
ロードス島戦記」から、作品世界の社会状況と人間関係に深く、長く、食い込んで大きな存在感を持っていた、灰色の魔女カーラ。
スレイヤーズ」から、ラノベにおけるザ・魔王であり、ベッタベタな魔王らしさを備えながら、この作品独自の世界設定の面白みの根幹でもあった、赤眼の魔王シャブラニグドゥ。
「ケイオスヘキサ三部作」から、悪意と混沌と嘲笑と反社会性の権化にして虐殺アーティスト、G.G.スレイマン
ブギーポップ」から、ゲスな小悪党の抱えていた怒り、存在の悲しさ、その最期が強く記憶に残る、スプーキーE。ブギーポップは平凡な男子高校生にして世界の敵であった早乙女正美もよいですけどね。
フルメタル・パニック」からフルメタ前半の立役者であったゲジ眉系暴狂イケ中年、ガウルン
「ソード・アート・オンライン」から、鉄と悪意の巨大なかたまりアインクラッドの無慈悲な支配者であり、また世界の種をまく者であった、茅場晶彦


この辺はラノベ史にのこる名悪役だったと思います。
アザリーやラッド・ルッソも好きなんですけどこの辺は悪役といえるかどうか微妙なラインですね。
ラノベ史の悪役十傑とかやりたいところではあるんですが、自分はシャナも禁書も戯言も読んでないしシュピーゲルも1冊しか読んでないのでちょっとむつかしいです。誰かやってください。
禁書は話聞く限り麦野沈利がすごい気になるんですが。